「箱根山戦争」舞台の芦ノ湖、新遊覧船は五輪開催地の公園を意識 JR西日本「ウエストエクスプレス銀河」デザイナーが明かす裏話 連載『鉄道なにコレ!?』【番外編】
▽「国鉄と同じような」座席生地 これに対し、西武グループの遊覧船事業を2023年3月に買収した富士急は子会社の箱根遊船(箱根町)を通じて「そらかぜ」の運航を今年2月に始めた。1985年に完成した旧「はこね丸」を約2億円かけて改造した。 旧日本国有鉄道(国鉄)時代に登場した電車「117系」を改造したウエストエクスプレス銀河を手がけた川西氏は「旧はこね丸も国鉄(時代の車両)と同じようなモケット生地の座席だらけだった」と笑う。 旧はこね丸の船内は正面を向いたシアター形式の長いすが並び、「ふさがれていたものの灰皿も付いていた」と昭和時代にタイムスリップしたかのような雰囲気だった。 ▽箱根本格進出「悲願だった」 そんな「質より量」を優先した昭和時代の設計思想は、外国人旅行者が増えるなど利用客のニーズが多様化している時代の変化に対応できなくなっていた。 しかし、西武鉄道が有価証券報告書で株式保有の名義を虚偽記載していた事件などで西武グループは経営危機に陥り、芦ノ湖での遊覧船事業は後手に回っていた。
事業を買収した富士急は世界遺産に登録されている富士山の北側で、遊園地「富士急ハイランド」(山梨県富士吉田市)やホテル運営などのリゾート事業を積極的に手がけてきた。 続いて事業エリアを富士山の南側へ順次広げており、代表的な保養地となっている箱根への本格進出は「悲願だった」と富士急関係者は打ち明ける。 ▽すみ分け 〝切り込み隊長〟となる「そらかぜ」の設計に当たり、川西氏はコンセプトを「箱根・芦ノ湖に浮かぶ緑の公園」と定めた。川西氏は「芦ノ湖はカルデラ湖のため(周辺に)子どもが遊べるような所がすごく少なく、公園のニーズがあるだろうと考えた」とし、海賊船と大きく異なる設計にすることで「はっきりすみ分けられる」との狙いもあったと話す。 公園のような雰囲気にするため、4階建てになった船体の屋外になった3階のデッキの先頭部には天然芝を敷いた。さらに船尾にツタを生やしており「運航前の朝方には乗組員らが水をまいて手入れをしている」(富士急)という。