全日本を75秒圧巻V…なぜ東京五輪女子ボクシング金メダリスト入江聖奈は「あと1年で引退」の決意を撤回しないのか
アマチュアボクシングの全日本選手権の男女14階級の決勝が28日、東京の墨田区総合体育館で行われ、東京五輪のフェザー級金メダリストの入江聖奈(21、日体大)が同期の松持亜美(21、日体大)を75秒RSC(レフェリーストップコンテスト、TKO勝利に相当)で破り3年ぶり2度目の優勝を飾った。東京五輪後にボクシングを大学卒業と同時に引退すると爆弾発言していたが、その決意に変わりはないという。なぜ入江の気持ちは揺るがないのか。
強烈ワンツーで2度ダウン奪う
これが世界の頂点を極めた拳の実力なのだろう。 わずか75秒だった。最初こそ左ジャブからフットワークを使ったが、強く打ったワンツーが当たると、「課題にしていた」という右左のボディから左フックの高速コンビネーションブロー、さらに強烈なワンツーで一度目のスタンディングダウン(カウント)を取った。再開後、再びボディを絡めた攻撃からワンツーがヒットして手の内を知る日体大の同期ボクサーの動きが止まると、レフェリーがRSCを宣告した。圧巻のTKO勝利である。 「めちゃくちゃ緊張して睡眠不足気味だったがなんとか結果がついてきて良かった。ちょっとボディが打てたので0.5歩前進でお願いします」 入江はリング上でマイクを持ち、いつもの明るさ爆発でインタビューに答えた。 東京五輪で日本人女子として初出場、初金メダルの快挙を演じて以来の試合。 前日は、午後9時に就寝したが、午前1時に目が覚めて眠れなくなり、再び睡眠に入ったのが午前4時で、2時間だけ眠って決勝への準備を始めた。緊張のあまりヘッドギアの下にかぶるキャップを持ってくるのを忘れ、同期に借りたという。 緊張した理由は金メダリストとしてのプレッシャーに他ならない。 「注目されることは、ありがたいんですが。いつか睡眠に支障をきたさないくらいの強いメンタルを身につけたい。カッコいいところを見せたいという欲深い自分が出ちゃった」 スピードに加えパンチ力が増したように見えたが、入江は納得していない。 「自分的には強くなったとは感じられていない。五輪の相手よりちょっと余裕があったからボディとか打てただけ。切羽詰まったときに今日みたいな動きができるか、といえば、そうじゃない。まだ強くなれていない」