「レクサス」ブランド スポーツ化へ本気のトヨタ
トヨタが考える「スポーツ」
「F」の技術の中で、トヨタが考える「スポーツ」として象徴的なものがある。それは電制トルクベクタリング機構「TVD(Torque Vectoring Differential)」だ。トヨタはこのレクサスRC Fを「ドライビングスキルに関係なく、誰もが楽しめるスポーツカー」だと言う。その象徴となるのがこのTVDだろう。 TVDはコーナリングの開始から旋回、脱出までの全てのシークエンスで車両の姿勢制御に関与する。具体的にはターンインにおいて、イン側のホイールを減速させ後方に引っ張ることで車両の自転起動を助ける。旋回に入ると外側のホイールを適度に増速してコーナリングを補助する。脱出時には姿勢変化とのバランスを見ながら最大限のトラクションを発揮するように制御を行う。 このTVDの働きによって「ドライビングスキルに関係なく」スポーツドライブが可能になるとトヨタは胸を張る。しかしこのデバイスに対する判断は難しい。技術によって成される進歩を否定しても始まらないとも思うが、一方で運転をどこまでも機械に代行してもらって楽しいのかという意見も当然出てくるだろう。どちらが正しいとも言い難い。ただ、少なくともトヨタはスポーツドライブを全ての人に平等にと思っていることは読みとれる。 さてトヨタの技術資料をベースに話をしていると「こんなにスゴイ」のオンパレードになってしまうが、技術資料には冷徹な数字も記載されている。車両重量1780キログラムという現実だ。これもまた難しい。様々な技術を盛り込んで1780キログラムの重量に甘んじたからこそ、誰でも楽しめるスポーツになったと言えるし、一方でそんなに重くするから人の手に負えなくなるのだという意見もあるだろう。トヨタがレクサスの「F」に託したスポーツ性の構築技術はここまで書き述べた通りである。それをどう取るかは個人の考え方によるだろう。 LFAが生産終了した現在、事実上ラインナップの旗艦となるレクサスRC FとGS Fの下には、もっと普及版のレクサス・スポーツが必要だ。そこを支えるのが「Fスポーツ」だ。トヨタ自身が「限られた人だけではなく、たくさんの人に走りを楽しんでほしい」とする「Fスポーツ」はレクサス・ブランドの多くの車種に用意される。LS、GS、IS、RC、CT、RX、NXの各車だ。