普段温厚な人が、酔ったら突然キレだす理由…「酒で性格が豹変するタイプ」の脳で起きている危険な症状
お酒を飲みすぎると、性格が変わったように豹変する人がいる。行動科学の研究者であるレーナ・スコーグホルム氏は「脳に一時的に軽いダメージを負っており、ストレスにさらされた脳と同じ状態になっている。アルコールやストレスは、脳の主な3つの機能のうち2つを停止してしまう」という――。(前編・全2回) 【この記事の画像を見る】 ※本稿は、レーナ・スコーグホルム著、御舩由美子訳『あいては人か 話が通じないときワニかもしれません』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。 ■なぜ人はアルコールで豹変してしまうのか パーティで、こんな光景を目にしたことはないだろうか? 最初は穏やかで礼儀正しかった人が、ずけずけとものを言うようになり、しまいには部屋の隅に座りこんだり、眠りこけたりしてしまう。 この光景は、脳の基本的な構造を説明するのにうってつけだ。というのも、私たちがアルコールを摂取したときや、ストレスの害が脳や身体に広がるときに何が起きるかがわかるからだ。アルコールもストレスも、同じように脳の働きに影響をおよぼす。 ストレス(またはアルコール)の影響を知り、その人が、そのときの状況を脳のどこで処理しているかがわかれば、適切に対応できる。 では、さっそく本題に入ろう。 そのパーティでは、出席者の1人が酒を飲みすぎて、すっかり羽目を外してしまった。これはとても興味深いハプニングだ。その人が、その状況を脳のどこで処理しているか(脳のどの領域が働いているか)、じつによくわかる。 ■ワインを前に「分析」「うんちく」を語る その日ディナーパーティがあることは数週間前からわかっていたのだが、あいにく家を出るのが遅れてしまった。私は、いくらか気詰まりを感じながら、パーティ会場に足を踏み入れる。そこは1800年代後期に建てられた豪華なアパートメントハウスの一室で、木工細工の装飾がふんだんにほどこされ、床はハードウッド、高い天井にはシャンデリアがぶら下がっていた。 部屋には、私を含めて6人いた。私たちは、いくらかぎこちないながらも、なごやかにおしゃべりした。みんなはじめて見る顔だ。やがて、私たちは美しく飾られたディナーテーブルの席につく。テーブルの上で揺れるキャンドルの炎が、独特の雰囲気をかもしだしていた。 会場に着いたときにはカクテルがふるまわれ、今度は上等のワインがグラスに注がれた。メニューとの相性をもとに厳選されたワインだ。私たちは、さっそくスウェーデン式で乾杯して、その赤ワインを褒めた。 ワイン通が2人ほどいて、すぐにうんちくを傾けはじめる。このワインの産地は? ブドウの品種は? 年代は? 香りは? 色の深みは? そのワインのあらゆる特徴について、こと細かに意見が交わされた。 続いて、テイスティングがうやうやしく行われた。ある人は、ほのかなオークの香りを感じとった。フルーティな風味とアニスの実の香りを感じた人もいた。分析はさらに続いた。このワインはフルボディだけれど、きりっとした酸味もある。甘味とバランスがすばらしい。まさに極上のワインだ、云々。 ようやくテイスティングが終わった。さあ、ワインを楽しもう。