「真摯な恋愛と淫行」想定例で見る線引きの難しさ 長野で処罰条例成立
全国で唯一、罰則付きの淫行条例がなかった長野県で、青少年との性行為などを処罰する「子どもを性被害から守るための条例案」が1日、成立しました。焦点となった処罰規定の施行は11月1日。条例の今後の運用で、冤罪などの懸念に応えていくチェック機能はどう働くのか――。そこで、県議会などで抽象的に触れられた想定例を具体的な例として整理し、関係の弁護士の見解や、これまで長野県が示してきた見解と併せて問題点を見てみました。 【写真】唯一の非条例県 長野県が「淫行条例」制定にかじを切った背景とは
本来は罰すべきではない行為に捜査が及ぶ恐れも
成立した条例は、性教育の充実や性被害への対応など総合的な対策を組み込みながら、罰則部分では「何人も18歳未満の子どもに対し威迫し、欺きもしくは困惑させ、またはその困惑に乗じて、性行為やわいせつな行為を行ってはならない」とし、これを行った大人は2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すとしています。 また、保護者の依頼など正当な理由がないまま深夜(午後11時から翌日の午前4時まで)に子ども(18歳未満)を連れ出した場合は30万円以下の罰金としています。
《想定例A》25歳の独身男性と17歳の女性が真摯な恋愛をしていた。いずれは2人とも結婚も考える間柄で性交渉もあったが、あることをきっかけに男性に対する女性の感情が悪化。男性はそれに気付いて女性に繰り返し許しを請い、女性は性交渉に応じた。しかし後になって女性は「男性にしつこく迫られて困惑し、性交渉に応じざるを得なかった」として被害届を出した。 ・弁護士「男性から女性に宛てたメールや関係者の証言など、女性の被害申告と整合するような証拠があれば条例違反とされる可能性がある。交際期間、2人の関係性、女性の感情変化の理由、男性の働きかけの態様や目的など、さまざまな事情を総合考慮するのであろうが、最終的に『困惑』に該当するか否かの評価は難しい」 ・長野県「警察がただちに捜査に入るということはなく、まず関係者に丁寧に事情を聴くことになる」 《想定例B》20歳の男子大学生と17歳の女子高校生が真摯な恋愛関係にあり性交渉もあった。女子高校生は大学受験を控えていることもあり、親は大学生との交際を快く思っていなかった。親が女子高校生を追及したところ、女子高校生はホテルへ行ったことを認め、親の手前もあって「自分はその気がなかったのに彼から強引に誘われて仕方なく応じていた」と話した。それを聞いた親は警察に被害届を出した。 ・弁護士「被害申告が家族などの第三者から出された場合は、当事者2人の意思に関係なくその恋愛関係に捜査が入ってくることも考えられる」 ・長野県「一方は大人、一方は子ども。届け出や相談を受けた場合、警察は事情を聴き、2人の恋愛感情などを調べた上で捜査するかどうか検討する。2人の間に恋愛感情が存在する場合は捜査に入らないと一般的に考えられる」