【角田裕毅を海外F1ライターが斬る】持ち前の回復力でチームメイト対決に勝利。キャリアのために重要となる今後の戦い
F1での4年目を迎えた角田裕毅がどう成長し、あるいはどこに課題があるのかを、F1ライター、エディ・エディントン氏が忌憚なく指摘していく。今回は第19戦アメリカGP、第20戦メキシコシティGP、第21戦サンパウロGPを中心に振り返った。 【写真】2024年F1第21戦サンパウロGP 角田裕毅とリアム・ローソンと(RB) ────────────────── レッドブル上層部の考えを知らない人々は、角田裕毅は今シーズン終盤、レッドブル・レーシングの来季シートを賭けて走っているのだと思うだろう。角田はダニエル・リカルドに勝った後、ふたつのトリプルヘッダーで、新しいチームメイト、リアム・ローソンとともに走ることになった。 クリスチャン・ホーナーは、リカルドのキャリアを復活させる試みに失敗した後、ローソンに大きな信頼を寄せるヘルムート・マルコの主張を受け入れて、ローソンにチャンスを与えるしかなかった。今年一年近くリザーブドライバーとして待機し続けたローソンは、マルコの思惑を理解し、自分がセルジオ・ペレスよりも優れていると証明できれば、2025年にマックス・フェルスタッペンの隣のシートを手に入れることができると考えている。 角田はというと、昨年、アルファタウリでチームメイトより良い仕事をしたものの、ホーナーもマルコも、一度として角田をペレスの後任として検討する兆候を見せなかった。育成プログラムを経て、F1レースドライバーとしての4年間、着実に成長してきたにもかかわらずだ。 そういう状況ではあるが、角田は、メインチームのドライバー候補であるローソンに勝つことができれば、自分の存在を強く示すことができる。 ローソンが復帰したオースティンの週末、角田は良いスタートを切った。角田はスプリント予選で速さを示し、SQ3に進出。本戦の予選では11番手だったが、レース1周目をうまく走り、8番手に浮上。DRSを失うとすぐにペレスに抜かれてしまったが、そこまでの16周、前の位置を守って走った。 ケビン・マグヌッセンの後ろに詰まっていた角田は、スティントを延長すべきだったが、チームはマグヌッセンの次のラップで角田をピットに入れた。これにより、時間を失っただけでなく、トラフィックに巻き込まれて順位を回復することができなかった。 その後、異なる戦略を採ったローソンが自分より前の位置でコースに戻ったのを見て、角田は冷静さを失った。スピンしたことにより状況は悪化、ローソンのみがポイントを獲得し、角田とのチームメイト対決を制した。 メキシコでは毎セッション、ローソンより速かった。しかし予選Q2で愚かなクラッシュを喫し、セッションが赤旗終了に。決勝では、ターン1に向けて縮まっていくのが分かりきっている隙間に飛び込み、他車とクラッシュし、またもやローソンに敗れる結果になった。 こういうことが続けば、プレッシャーに負けてしまう人間もいるだろうが、角田は違う。角田の良いところは、すぐに立ち直ることだ。彼はサンパウロでしっかりやるべきことをやった。常にローソンより速かった角田は、日曜早朝の予選セッションがひどいコンディションで行われるなか、キャリアベストの3番手を獲得してみせた。ホーナーとマルコが支持するワンダーボーイは5番手。角田は見事にチームメイトに勝ったのだ。 レースでも、序盤は3番手を守って走った。しかしチームからピットに呼び寄せられ、フルウエットタイヤに交換した後、チャンスは失われた。あれほどコンディションが悪いときには、セーフティカーが出動したり、赤旗が出る可能性が高い。そうすればフリーストップが得られたのに、チームはなぜこういう判断を下したのか。マックス・フェルスタッペンとアルピーヌふたりは正しい判断の下でステイアウトしてトップ3を獲得。シャルル・ルクレールが見事なリスタートを切ったことで、角田は結局7位にとどまった。しかし、ローソンは9位であり、3連戦の最後にチームメイト対決において勝利を収めたのは角田だった。 残り3戦でも角田は勝ち続けなければならない。レッドブルに昇格する可能性が低いことは分かっているが、良いパフォーマンスを見せ続けていれば、他チームの目に留まるかもしれない。潮流に逆らいながら、F1キャリアのため、良い仕事をし、2025年の最後まで全力でプッシュし続けることが重要だ。 ──────────────────────── 筆者エディ・エディントンについて エディ・エディントン(仮名)は、ドライバーからチームオーナーに転向、その後、ドライバーマネージメント業務(他チームに押し込んでライバルからも手数料を取ることもしばしばあり)、テレビコメンテーター、スポンサーシップ業務、講演活動など、ありとあらゆる仕事に携わった。そのため彼はパドックにいる全員を知っており、パドックで働く人々もエディのことを知っている。 ただ、互いの認識は大きく異なっている。エディは、過去に会ったことがある誰かが成功を収めれば、それがすれ違った程度の人間であっても、その成功は自分のおかげであると思っている。皆が自分に大きな恩義があるというわけだ。だが人々はそんな風には考えてはいない。彼らのなかでエディは、昔貸した金をいまだに返さない男として記憶されているのだ。 しかしどういうわけか、エディを心から憎んでいる者はいない。態度が大きく、何か言った次の瞬間には反対のことを言う。とんでもない噂を広めたと思えば、自分が発信源であることを忘れて、すぐさまそれを全否定するような人間なのだが。 ある意味、彼は現代F1に向けて過去から放たれた爆風であり、1980年代、1990年代に引き戻すような存在だ。借金で借金を返し、契約はそれが書かれた紙ほどの価値もなく、値打ちがあるのはバーニーの握手だけ、そういう時代を生きた男なのである。 [オートスポーツweb 2024年11月17日]