ADHDの診断を受けた小説家が、自身の内面"探検を綴った"エッセイを刊行
――身に覚えがあります......。 柴崎 ありますよね(笑)。まずは「助けを求めることが迷惑ではない」という雰囲気が大切なんだと思います。社会全体がそういう雰囲気になれば、"困った"ことのスパイラルから抜け出しやすくなると思います。 ――「自分も発達障害かも」「服薬したら何か変わるかも」と思ったことがある読者に向けて、ひと言お願いします。 柴崎 日常生活ですごく困っていることがあるのなら、客観的な診断を受けるのはひとつの手段です。実際に私も診断と服薬は役には立っています。 また、そこまで困っていなくても、この本が自分の感覚を知る手がかりになればと思います。それについて誰かと話してみたりしても、意外な発見があるかもしれません。 ●柴崎友香(しばさき・ともか)小説家。1973年生まれ、大阪府出身。2000年に『きょうのできごと』でデビュー(行定勲監督により映画化)。『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(濱口竜介監督により映画化)、『春の庭』で芥川賞、『続きと始まり』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。他の小説作品に『ビリジアン』『虹色と幸運』『百年と一日』など、エッセイに『よう知らんけど日記』『大阪』(岸政彦との共著)など、ほか多数 ■『あらゆることは今起こる』医学書院 2200円(税込)眠い、疲れる、固まる、話が飛ぶ、カビを生やす......長年悩まされてきた現象の原因は、発達障害にあった? ADHDと判明した小説家は、その診断を「地図」として、自身の内面へと歩みを進め、謎を解いていく。時にユーモラスに、時にシリアスに自分の特性に向き合う著者の旅路に同行するうち、読者も自分についての理解が深まっていく。芥川賞作家・柴崎友香による、唯一無二の最新エッセイ 取材・文/Mizuki Takeuchi 撮影/金澤浩二