ノーベル賞受賞者、AIの急速な進歩に警鐘…「ウイルスや殺傷兵器の作製に使用される」
【ストックホルム=小林泰裕】今年のノーベル物理学、化学、経済学、生理学・医学、文学の5賞の授賞式が10日、スウェーデンの首都ストックホルムで開かれた。今年のノーベル賞は人工知能(AI)関連の研究が席巻した。物理学賞を受賞したカナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授は、AIの急速な進歩に懸念を示し、「政府や国際機関による緊急かつ強力な対応が必要だ」と警鐘を鳴らした。
ヒントン氏は授賞式後に行われた晩さん会で登壇し、「AIは、すでに独裁政権による大規模な監視やサイバー攻撃に悪用されている。近い将来、恐ろしいウイルスや殺傷兵器の作製に使用される可能性もある」と指摘した。
AIの開発企業に対しては、「安全性を軽視して利益追求に走っている」と批判。「AIを人間の制御下に置き続けられるかどうかわからず、安全性確保のための研究を急ぎ進める必要がある」と強調した。
また、経済学賞を受賞した米マサチューセッツ工科大のダロン・アセモグル教授は、AIの普及で格差や不平等が拡大するとして「豊かさをどうすれば社会で共有できるのか、私たち全員で考えていかなければならない」と話した。
授賞式はストックホルム中心部のコンサートホールで行われ、11人がスウェーデン国王からメダルと賞状を受け取った。