恐竜を絶滅させた巨大隕石の謎 最先端研究の“答え合わせ”はこれから
「隕石が衝突した衝撃で地震が起こった!」 「じゃあ、地震が起こると何で恐竜は生きられなくなったんだろう?」 「えっと…」 「海に隕石が落ちて津波が起こった!」 「じゃあ、空を飛ぶ翼竜は?」 「そっか…。あ、わかった!ちょうど木にとまって休んでたんだよ!」 山口先生やそれぞれのグループを見守るスタッフから時折投げかけられる問いに一生懸命頭をひねり、ストーリーを紡いでいきます。 「隕石が地球の反対側まで貫通した!そして、津波が起こった!」 「隕石がぶつかった後、そのカケラが世界中に飛び散った!」 「森林火災が起きて、雲ができて、地球が寒くなった!」
どのように生物が大量絶滅したのか
子どもたちがつくり上げたストーリーがあっているのか、少し違うのか。それこそが、世界中の研究者が今まさに解明しようとしている謎です。掘削プロジェクトの成果としてクレーターの形成過程が分かったことで、衝突の規模や衝突によって放出されたエネルギーが詳細に計算できるようになったからです。それにより、隕石衝突がどれくらいの規模の環境変動を引き起こすかが高い精度で推定でき、どのように生物が大量絶滅したのかの解明につながると期待されています。 また、大量絶滅というそれまで地球上で栄えていた生命の終わりは、新たな生命の始まりでもありました。山口准教授は、隕石衝突の現場であるクレーターが、その後の生物の回復に重要な役割を果たしたとして着目しています。地球の深海にある熱水噴出孔の周辺で生物が豊かなように、隕石衝突によってできたクレーター内の熱水環境が、新しい生命のゆりかごになったというものです。 現在、プロジェクトで収集した岩石試料は、プロジェクトに参加した世界中の研究者たちによって、さらなる解析が進められています。今解き明かされようとする6550万年前の地球上の様子。これから発表される研究成果に、ぜひご注目ください。
-------------------------------------- ◎日本科学未来館 科学コミュニケーター 坪井淳子(つぼい・じゅんこ) 1989年、愛知県生まれ。専門は地学。民間気象会社での勤務を経て、2016年より現職