恐竜を絶滅させた巨大隕石の謎 最先端研究の“答え合わせ”はこれから
「恐竜が絶滅したのはなんで?」――「隕石が地球に落ちたから?」 では、なんで隕石が落ちると恐竜が絶滅するんだろう? 隕石が直撃したから? 落ちた衝撃で地震が起きたから? 大津波が起きたから? でも、空を飛ぶ翼竜までが絶滅したのはなんで? 子どもたちは「なんで?」を何回も考えて、ストーリーを紡いでいきます。 【画像】白亜紀末大絶滅はなぜ起きた?(上)-“化石記録”ミステリーの歴史
これは、さいたま市で開かれた子ども向けサイエンスカフェの一場面。講師は、恐竜を絶滅させた隕石衝突の謎を解くための国際研究プロジェクトのメンバーである東邦大学の山口耕生准教授です。実は、子どもたちが考えていた謎は、今まさに研究者が取り組んでいる科学の最先端。”答え合わせ”はこれからなのです。
メキシコ湾の巨大クレーター掘削プロジェクト
6550万年前。恐竜たちが暮らす地球に、突如やってきた大事変。巨大な隕石が地球に衝突し、恐竜をはじめとした多くの生き物が絶滅しました。恐竜の時代とも呼ばれた白亜紀の終わりをもたらした事件です。 この史上まれに見る大規模な隕石衝突は、昔も今も研究者たちの大きな関心を引いています。しかし、この隕石落下の痕跡であるメキシコ湾ユカタン半島沖のクレーター(チチュルブクレーター)のような大規模なクレーターはどのようにして形成されるのかは分かっていませんでした。その謎を解き明かすため、今年4月に国際研究プロジェクトチームが行ったのが、チチュルブクレーターの掘削です。山口准教授はそのチームの一人でした。 掘削は、直径180キロのチチュルブクレーター内にある環状に盛り上がった地形に狙いを定めて行われました。「ピークリング」と呼ばれる場所です。2か月かけて約1300メートル掘削し、採集した岩石試料を10月にドイツ・ブレーメンで分析。その成果の第一報となる論文が、11月18日、科学誌「Science」に掲載されました。衝突の瞬間、岩石が液体のようにふるまい、ヒマラヤ山脈よりも高く付き上がったという驚きの解析結果でした。