プリキュア「生みの親」鷲尾天さんが語る、なぜ今『パンダなりきりたいそう』の”アニメ化”をやるのか…? その「意外なワケ」と「知られざる舞台裏」
パンダの音楽と動きの可愛らしさ、ノンバーバルゆえの国際性
絵本『パンダなりきりたいそう』は、パンダがチューリップになったり、バナナになったりしながら体操する。それを読む子どもたちは、チューリップやバナナになりきったつもりで、しぜんと身体を動かしはじめる。2016年の刊行時、ストーリー性があまりないパンダの絵本を手に取って、なぜ鷲尾さんはアニメとして成立すると思ったのだろうか。 「このパンダなら世界中で受け入れられるのでは、と思ったんですよね。セリフがほとんどないノンバーバル(非言語)な作品で、音楽と動きの可愛らしさだけで表現できる。そういうジャンルって実は一番難しいんですよ。今は昔と違って、世界各国が自国の子どもたちのために各国内でアニメーションをたくさん作っている時代です。その市場の中に入り込んでいくのはとても大変なんです」 グローバルスタンダードが求められる時代、海外にも受け入れられる「もの作り」は極めて難しくなっている。たとえば主人公が人間だと、どのように多様性を持って人物を造形するかなど、さまざまなハードルがある。多種多様な文化に受け入れらやすいアニメの主人公を考えたとき、動物、もしくは車や飛行機になっていくのは必然だ。 「パンダは、東アジアをイメージさせる動物でもあります。やわらかい毛並みやたどたどしいしぐさ、体操のおもしろさに、音と可愛い動きが加われば、先々いろんなことができそうな気がしました」 具体的には、絵本の中のどんな場面に注目したのだろうか。 「たとえば『パンダともだちたいそう』で2匹のパンダが背中合わせにくっついたとき、パンダの白黒の模様ゆえ、海苔付きのおにぎりに見える、という驚きですよね。だまし絵のようなおもしろさに「あっ」と子どもも思うだろうし。『パンダなりきりたいそう』では、伸び上がってくねくね体をゆらしながらバナナになりきった気持ちになれるでしょう。服を着替えるとき、お母さんやお父さんが「バナナさん、皮をむくよ」と声をかけたら、子どもはきっと嬉しそうに服を脱がせてもらうんじゃないかな……。毎日の生活のちょっとしたことですが、子育てって大変でしょうから。そんなことだけでも助けになるんじゃないかな」