プリキュア「生みの親」鷲尾天さんが語る、なぜ今『パンダなりきりたいそう』の”アニメ化”をやるのか…? その「意外なワケ」と「知られざる舞台裏」
大切なのは、日常のリアリティを追求すること
『ドラゴンボール』『ワンピース』『美少女戦士セーラームーン』『プリキュア』シリーズなどを手がけてきた東映アニメーションは冒険アクションものを得意としている。 「私自身、30代で中途採用試験を受けて東映アニメーションに入りましたが、そもそも小学生の頃『マジンガーZ』や『サイボーグ009』が大好きで、おもちゃも買ってもらったし歌もまだ歌える。そういう会社なら受けてみるかという気持ちでした」 1998年に入社した鷲尾さんは『キン肉マン2世』『釣りバカ日誌』などのプロデュースをしたのち、2004年にアニメ監督の西尾大介さんと組んでのちの大ヒット作となる『ふたりはプリキュア』を制作する。このとき、ストーリーの盛り上がりやアクションなどの見せ場だけでなく、キャラクターの日常のリアリティを丁寧に追求していく西尾さんの制作姿勢に影響を受けたという。 「たとえば『金田一少年の事件簿』では、西尾さんは、事件に遭遇した金田一と美雪の驚きをちゃんと表現してくれと毎回必ずスタッフや声優に伝えていました。彼らは普通の高校生だから、決して事件に慣れてはいけない。遭遇するたびに大声で驚いてくれと。テレビシリーズは3年間でしたから、おそらく3年間スタッフにいい続けたんでしょう(笑)。そうした姿勢を近くで見ていたことは自分の原点のひとつだと思います」
もっとやわらかいものを作りたい
アニメ映画は「漫画映画」、テレビアニメは「テレビまんが」と呼ばれた時代があったように、マンガとアニメの関係は深い。というより日本のアニメの原作はマンガであることがほとんどだった。 しかし、もともと児童書が好きだった鷲尾さんは、当初難しいと思われていた児童書のアニメーション化をいろいろ手がけてきた。『怪談レストラン』(童心社)、『ねぎぼうずのあさたろう』(福音館書店)、『おしりたんてい』(ポプラ社)、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(偕成社)……。これらのアニメが子どもに喜ばれたことで、「児童書もアニメーション化できる」という流れを作ってきた。 ただ鷲尾さんにはまだチャレンジしていないことがあった。それは0・1・2歳向けの幼い子向けのアニメだ。「『ねぎぼうずのあさたろう』や『おしりたんてい』よりも、もっとやわらかいもの、うんと小さいあかちゃんくらいの子が好きなものが、何かできないかな」という思いがあったという。