史上初めて44秒台選手同士が日本選手権で対決 男子400mを国際レベルへ押し上げる“ダブル佐藤”【日本選手権プレビュー】
日本選手権は「人生を変える大会だった」と、1年前の取材で話していた佐藤風。44秒台の記録を出して臨む今年は、どういう意味を持たせたいのか。 「いやあ、今回も人生を変えに行く日本選手権にしたいですね。日本選手権は毎回、一番緊張というかプレッシャーがかかる試合で、代表選考になっている試合ですから、毎年日本選手権は自分の人生かけてやる価値があると思っています」 “ダブル佐藤”の強さは、人生をこの種目に懸けてきた背景があるからだろう。 ■お互いのライバル意識が世界に向かう原動力に 佐藤風は佐藤拳のことを「最初は同じ名字のすごい人がいる。いつか僕も4×400mリレーの代表で走りたいな」という認識の仕方だった。一緒に遠征行くようになって話もするようになると「本当に色々なことを勉強されていて、レース展開もすごく落ち着いていて、色々な経験を力に変えている方だな」という印象を持つようになった。 佐藤風が敬意を持ち、佐藤拳は穏やかな性格で後輩たちからも慕われている。おそらく2人の間には、何か通じ合うものがあるのだろう。 佐藤風はいざトラックに立てば、2学年先輩の佐藤拳へのライバル意識を隠そうとしない。昨年は国内試合では何度も勝てたが、国際試合では負け続けた。世界陸上準決勝では自身の方がよかったが、予選を日本記録で走った佐藤拳に記録的には先行された。 昨年のアジア選手権では45秒13と自己記録を更新しながら、45秒00(当時日本歴代2位)の佐藤拳に敗れた。帰国後の取材で「次は自分が勝って、『拳太郎さん、オレの勝ちだ』と言いたいですね」と話したことがあった。2人には世界を目指す共通認識がある。国内で切磋琢磨することが世界に近づいていく重要な要素だとわかっているから、ライバル意識を表に出すことができる。佐藤拳は今年の日本選手権での対決を次のように位置付けている。 「佐藤風雅選手も、(前回優勝者で世界陸上準決勝進出の)中島佑気ジョセフ選手(22、富士通)も、確実に44秒台で走ってくる。世界の決勝を目指した際に確実にライバルとなる選手たちです。そうしたライバルと国内でまず勝負ができることは、パリ五輪を戦うことを見据えたときに、日本一をかけて勝負をすることに大きな意味をなすと思います。その勝負の中で私自身が考える400mの組み立てができなければ、パリ五輪でも勝負はできません。400mを5つの区間に分けて考えていますが、日本選手権でも区間毎にやりたい動き、パフォーマンスの発揮を1つ1つ丁寧にやっていきたいと思っています」