考察『光る君へ』11話 まひろ(吉高由里子)だって、本気で北の方になれるとは思っていない!倫子(黒木華)と同じ意中のその男性の
大河ドラマ『光る君へ』 (NHK/日曜夜8:00~)。舞台は平安時代、主人公は『源氏物語」の作者・紫式部。1000年前を生きた女性の手によって光る君=光源氏の物語はどう紡がれていったのか。11話「まどう心」では、職を失った父のために、まひろ(後の紫式部/吉高由里子)が道長(柄本佑)の父、兼家(段田安則)のもとを訪ねます。まひろと道長の恋心に、身分、意識の差が厳しい現実として立ちはだかって……。ドラマを愛するつぶやき人・ぬえさんと、絵師・南天さんが各話を毎週考察する大好評連載第11回です。
どんなときでも惟規は……
為時(岸谷五朗)失業ショック。 お先真っ暗としか言えない状況なのに「死ぬ気で学問に励め」と父から告げられて、この世の終わりのような顔で姉・まひろ(吉高由里子)を振り返る惟規(高杉真宙)の表情に、思わず吹き出してしまった。どんなときでも君は、家の中を明るく照らす光だね。
微妙な変化を演じる柄本佑
公任(町田啓太)、斉信(金田哲)、行成(渡辺大知)の公達たちが昨夜起こった政変……寛和の変について噂する。 どうやって帝を出家させたのかと単刀直入に訊ねる斉信に、道長(柄本佑)は、 「聞かないほうがいいよ」 そう答える顔は前回までのおっとりとした青年のそれとは、どことなく変わっている。この、どことはなしに、という微妙な変化を演じる柄本佑に唸る。 まひろとの逢瀬……性的な経験を経た故か、クーデターという大事に関わってしまったせいか、それともその両方か。友・直秀(毎熊克哉)の死とその埋葬の直後にやってきた、男の人生における節目のできごとが、心優しいのんびり屋の青年を包む薄皮をまた一枚剥ぎ取ってしまったかのようだ。 ここで行成が、道長に「お顔つきが」 ごく僅かな変化に気づいた。普段から道長のことをよく見ているのだろう。 それはなぜ……。
厳しい倫子は自覚している
父をふたたび官職に就けてもらいたい、摂政・兼家(段田安則)に取り次いでほしいという、まひろの願いに、いつになく厳しい倫子(黒木華)の言葉。 「摂政様のご決断はすなわち帝のご決断」 「摂政様はあなたがお会いできるような方ではありません」 倫子は政治の中枢にいる人々がどういった存在か、きちんと頭に入れているということだ。自分の未来の夫が、将来自分が産んだ子らが政に深く関わる家の一の姫だという自覚が、ここにも現れている。 「会えない」ではない、「会えるような方ではない」。己の分をわきまえろという話だ。普段親しくつきあっている倫子でさえ、まひろに身分の壁はけっして越えさせない。 まあそれでも、摂政に会いに行っちゃうんですけどね、まひろは。必死だもの。 失業保険などない……そして貨幣がまだ定着しきっていない時代は、ごく一部を除いた多くの人間にとって富を貯えにくい時代だ。 為時の家はいま、大ピンチなのである。