海外での認知不足を克服し、年率50%成長! 旭化成エレクトロニクスの新たなデジタル戦略
さまざまなセンシングデバイスや高度なIC製品を開発・販売している旭化成エレクトロニクスは国内向け、特に海外向けのマーケティング支援を強化する目的で、CMS「Adobe Experience Manager(AEM)」、 MAツール「Adobe Marketo Engage(マルケト )」を導入した。 海外では日本のような認知が得られていない同社が、特に海外でのプレゼンスを高めるためには、日本語サイトの翻訳サイトを海外に展開する、という状態から国ごとに最適化されたWebページやマーケティング支援を行うことが必須であった。CMS、MA導入により、デジタル起因での案件化率は導入する3年前と比較して3倍以上に伸び、年率50%成長を実現している。活用法や成果について、マーケティング&セールスセンター デジタルマーケティング部の井上望氏と、同部部長の池原章浩氏に話を聞いた。
グローバルマーケティング強化のために体制を刷新
旭化成は、100年以上前に始まった繊維事業を祖業とし、B2B製品から「サランラップ」「へーベルハウス」などのB2C製品まで手掛ける。創業100年を超える伝統的な大企業であり、国内ではその名を知らない人はいない。ただ、旭化成エレクトロニクスとなると、何の会社かすぐに言い当てられる人は少ないかもしれない。旭化成は3つの事業領域(マテリアル、住宅、ヘルスケア)で事業を展開しており、マテリアル領域に属する旭化成エレクトロニクスは、スマホに内蔵する地磁気センサーや、半導体集積回路などの電子部品を開発、販売している。 化合物半導体技術やアナログ/デジタル混載技術を特長とするユニークな製品を開発していて、会社としては海外事業収入の比率を上げたい考えだが、国内と違って海外では旭化成という名前でさえ知名度が低い。加えて、海外拠点のリソースは潤沢ではなく、少人数で広い範囲をカバーしなければならない状態だ。デジタルの活用は必須だった。 ┌────────── 海外事業の収益向上が会社としての至上命題。それを背後からいかに支援できるかが、デジタルマーケティングの役割です。旭化成は、日本では知名度があるが、海外ではゼロに近い。我々の製品を知ってもらって、買ってもらわなければいけないのです(池原氏) └────────── もちろんWebサイトはあったが、当初は海外事業を支援できるほどのものではなかったという。 ┌────────── 英語のサイトはありましたが、日本語サイトを直訳しただけのようなものでした。また、コンテンツの量も質も足りていませんでした(井上氏) └────────── 井上氏は、2019年にコンテンツ制作担当としてデジタルマーケティング部の前身となる部署へ異動になった。元はLSI(大規模集積回路)の設計を担当していたというから、経歴としては異色だ。 BtoB製品でかつ技術的な内容のコンテンツも多いので、技術面の中身を知っている人がコンテンツ制作に関わることは必要だろう。また、伝統的大企業にありがちなのだが、旭化成エレクトロニクスには元々マーケティングの部署がなく、社内の各部署からメンバーが集められた状況だった。