「勝ち点を意識しろ、相手は気にするな、自分と向き合え」初のリーグ優勝へ、首位独走中の指揮官が語る“追われる立場”の心構え|フットサル
【Fリーグ】バルドラール浦安 3-1 バサジィ大分(12月22日/バルドラール浦安アリーナ) 【映像】指揮官が“語り尽くす”バルドラール浦安が首位にいる理由 12月22日、Fリーグ2024-2025 ディビジョン1の第19節が行われ、バルドラール浦安とバサジィ大分が対戦。浦安は3-1で勝利した。 小宮山友祐監督が今シーズン限りでの退任を発表してから、初めてのホーム戦。残り5分までは1-1で試合が進む苦しい展開に。相手に退場者が出たことをきっかけに試合終盤で2ゴールを挙げ勝利したものの、試合後の記者会見に現れた小宮山監督の表情は険しいままだった。 「“勝つためのコミット”が弱かった」 今節はハーフタイムで選手たちに厳しい言葉を投げかけた。それは、目の前の試合に勝つことはもちろん、優勝をつかむために今のままではいけないという危機感からだったのだろう。 クラブや選手、スタッフを含めた“リーグ初タイトル”獲得に向け、首位独走中の指揮官が考えていることとは。約30分にわたる会見で、試合の総括、退任について、優勝するために選手たちに伝えていることを語った。約8000字でお届けする。
同点で迎えたハーフタイムでの激励
●小宮山友祐監督|バルドラール浦安 ──試合を振り返って。 試合前から難しいゲームになると思っていましたが、案の定そうなりました。 大分は怪我人も多くベンチの人数が少ないなか、やれることが限られているため、片方のセットでピヴォを使って、もう一つのセットはクワトロでくると考えていました。大分は人との距離感やボールを奪ったあとのスピードといった、ディフェンスが素晴らしいチームなので、そこに対して自分たちが何をするかを今週は準備してきました。 ただ、どちらかというと狙っていたことができず、うまくいかない状態で試合が続いたという認識をもっています。それでも、タイトルを獲るチームは流れが良くなくても勝ち切ることが大事だと思いますし、勝ち点3を取れたことは良かった部分だと思います。 ここから先のファイナルシーズンを考えた時に、今日のハーフタイムでは「このような戦い方をしていたら、勝つことは難しい」と、久しぶりに選手たちに強く伝えました。決して誰かが緩んでいた訳でも、緊張していたわけでもないですが、心のどこかで相手の人数が少ないことや、1対1で簡単にボールを取られない感覚があったと思います。でも第1ピリオドでは、1発取られた時のスピードのあるトランジションでピンチを招いていたので、ボールの失い方に対して、より緊張感をもつようにという話はしました。それでも、1試合を通じてそこをもつことができなかった印象です。 本当に苦しい試合でしたが、第2ピリオドではフリーキックからロド(ロドリゴ)が点をとり、最後はパワープレー返しで点を取って、勝つことができてほっとしています。どちらかというと、うれしさよりも安堵のほうが強いです。これからタイトルを獲るために、戦う上での課題も見えました。来週はアウェイで王者にチャレンジするので、今の順位は関係なく勝ち点3を取れるようにいい準備をしていきたいです。 ──試合後、小宮山監督は喜んだ様子ではなく、俯いて考える姿を見せていましたが、どんな気持ちでしたか? 今日の試合は、自分たちのやりたいことができませんでした。ボールは保持していたし、浦安が攻める時間は長かったですが「勝つためのコミット」が弱かったと思っています。 例えば、大分は並んでマンツーマンでついてくるので、攻撃する時にはシンプルに2人組で相手の背後に抜けてシュートで終わる形でいこうと伝えていました。 でも、今日の試合ではそれが出せていない。そういう形しかできない選手であればやり切れるのでしょうけど、うちの選手は上手いので、その形をキャンセルして違うことをやってしまいます。それができる選手たちであることは素晴らしいですが、今日の試合ではシンプルにやらないことでテンポが遅くなっていました。相手に戻る時間を与えるから、カバーリングされてプレスがかかってしまう。 また攻撃でも余計な手数をかけるから、パスを出すタイミングが遅れる。アラへの長いパスを出さざるを得なくて、その結果ひっかけてカウンターを食らう……全部悪い方向にいっているなと感じていました。 そういう意味では、1点しか失点しなかったことはラッキーでした。イゴールを含め、ボールを取られた選手がすぐに撤退して戻るといった最低限のことはやってくれましたが、まずはカウンターを受けないようにすることも大事です。 一つ、二つのプレーの判断の遅さが命取りになるリーグにいることはわかっています。いくらイゴールがいても、相手はショートカウンターで決めてくるし、その時に気づくのでは遅い。今日、この試合で勝ったからこそ、修正をしないといけないということは強く伝えました。 ──ファーストセットはボールを保持できるからこそ、つないでしまうという話は前回のホーム戦でも言っていましたね。 そうですね。すごく難しいことなんですよ。ボールを回しすぎても、突破できてシュートまでいけちゃえばナイスプレーになるんですよね。 僕は2人組でワンツーして縦に抜けていけと伝えますが、彼らはみんなボールを触りたいので、触らないやり方はキャンセルしがちです。 シンプルなプレーが必要だというのは、常々彼らに言っています。それをすればもっとボールが回ると思うんですよね。裏を取るから、相手は背後を取られたくなくて下がるじゃないですか。そうなってからキャンセルをすることには、意味があると思います。 でも今は裏を狙わないで、回すことが主になってしまっている。一番良くないのはタケ(本石猛裕)が降りてくることです。そこで誰も裏へ出て行かない時に詰まります。調子がいい時はみんなが抜けていきますが、調子が悪いと誰も出ていかない。 そこら辺は何回も話しているんですけどね。本人たちは出ているつもりだといいますが、映像を見ると出ていない場面もあります。あれだけボールを持てたら、もう一手間加えて確実に崩したい気持ちもわかるんですけどね。でも私は監督だから、そこでひっかかってトランジションで失点することが頭によぎります。シンプルにプレーできる選手たちだから、そこはやってほしいなと思っています。 ──今日の試合で喝を入れたところから、ここから切り替えていくのか、それとも引き続き厳しい言葉を投げかけていくのかを教えてください。 彼らもわかっていると思いますし、これ以上厳しくすることはないと思います。選手への評価は、出場時間や起用方法で感じていると思います。選手たちにいつも伝えていますが「ブラジル人だから、日本代表だからというのは、関係ない」と。コンディションが良くて、チームがやろうとしていることを体現できる選手をピッチに送り出していきます。 自陣でボールを簡単にロストする選手は使いづらいというのは常々言っています。自分たちはディフェンスのチームなので、相手よりもディフェンスで優位に立つ。余計なボールロストをなくして、まずはディフェンスから徹底する。そういったところを色濃く出していけたらと思います。 厳しく言ったところで響くこともあれば、響かないこともありますしね。厳しくいうことがすべてではないと思っています。映像を共有して気づかせることも一つですし、選手によっても言い方は変えないといけません。 退任する監督のもとでタイトルを獲りにいくことは難しいと思いますし、今後はより難しいマネジメントになると思います。選手である以上、目の前の試合を頑張りますが、長い選手生活を考えた時に、来年はこの監督の元ではできないとなると、いろいろと難しさはあると思います。でもうちの選手たちは、練習から僕の伝えることをしっかり体現してくれています。私も来シーズンどうなるかはわからないですが、今この瞬間、目の前の試合、今シーズンのタイトルに全員がコミットして、同じ気持ちでやれていると思います。
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