「勝ち点を意識しろ、相手は気にするな、自分と向き合え」初のリーグ優勝へ、首位独走中の指揮官が語る“追われる立場”の心構え|フットサル
自分を信じて、強みを貫く
──今後、優勝のプレッシャーがのしかかると思いますが、監督としてどのようなことを大事にしていきますか? まず一つが、今の浦安には、Fリーグのタイトルを獲った選手もスタッフもいません。イゴールもロドリゴも獲っていない。だから、自分たちは未知なることにチャレンジしています。 未知なることに挑戦しているチームは、チャレンジャー精神をもって、もっとアグレッシブに自分たちのスタイルを貫かなきゃいけない。自分たちのスタイルは、ハイプレスをして、ボールを相手コートに送ってゲームを進めることです。相手コートでプレーしていれば、失点する可能性は減りますよね。自陣で構築しようとすると、奪われたらショートカウンターで失点する可能性が高まります。 見ているほうとしては、後ろからきちんとつないでいくほうが、美しいし、フットサルの魅力も詰まっていると思います。もちろん私も理想と現実を追求するのであれば、両方やりたい。それでも「勝つ」ことを考えた時に、まずは強みを貫くこと。そのためにやらなきゃいけないことにフォーカスしないといけない。自分たちはここまで何を強みとして勝ってきたかを思い出さないといけません。 周りはいろいろなことを言うと思います。実際今も「今シーズンの浦安は強いね」と言われますが、実はそんなことはありません。圧倒している試合もありますが、逆に圧倒されている試合もあります。強いチームとは、どんなチームにも圧倒して、シュート数も倍打つようなチームだと思います。そこは自分たちにまだまだ足りない部分ですし、外からの声は全部シャットアウトしていいと伝えています。 その上で、自分を信じなさい。仲間やクラブ、自分がここまでやってきたことを信頼しなさいという話をしています。「夜練だから勝てない」「2部練をしないから勝てない」「21時から23時なんて、練習する時間じゃない」と、この17年間、現役の頃から山ほど言われてきました。でもそれを全部ひっくり返して、優勝すればいい。自分たちがやってきたことを信じて、最後までやり続けられるかだと思います。 私は全然ブレていません。やってきたことを、ただやり続けるだけです。相手のスカウティングはもちろんしますが、全体的なところでいうと、自分たちのやるべきことをしっかりやり続けることが大事だと考えています。 二つ目は、ここまできたら、いやでも勝ち点は意識するじゃないですか。「今日は名古屋と勝ち点9離れた」「しながわとは7離れている」。意識するなというほうが無理だから、「逆に意識しろ」と伝えています。 2位とはどのくらい離れているのか。残りのレギュラーシーズンも、上位リーグでも、自分たちがあと何回勝ったらタイトルに届くんだ。自分で考えて、意識していいよと伝えています。そしたら自ずとプレッシャーもかかるし、緊張感も増す。そこを超えないと、タイトルなんて取れません。 名古屋は今までずっとそういうのと向き合ってきていますし、それを全部超えてきています。昨シーズンは町田に勝ち点を離されたけど、最後にまくる力があった。それは、彼らが勝ち点とずっと向き合ってきたからだと思います。 タイトルを獲るために、目先の勝ち点を計算しないで優勝なんてできません。全員が向き合って、現状を見て、どう振る舞うかまで考えてほしいという話をしました。未知だからこそ、そこと向き合うことが必要かな、と。逃げてもしょうがないですし、誤魔化しが効かない。ましてや勢いだけでは絶対勝てません。 しっかりと地に足つけて、向き合って、勝ち点を計算して。そのためにやるべきこと、自分たちのプレースタイルを貫いてやっていこうと伝えています。 まあ、一番びびっているのは私ですね。もう、ビビってますよ。今日もそうです。負けたらやべーなとずっと考えていました。 でも、監督はビビっていていいと思うんですよね。僕が「大丈夫、大丈夫!全部ポジティブにいこうぜ!」って言っていて、うまくいかなくなった時にどうしますか?という話なんですよ。全部がポジティブであることの一番のデメリットはそこだと思います。 行き詰まった時にどうするのか。その時に慌てて、こうしようああしようと考えても、無理無理。名古屋が、しながわがこのまま覚醒しなかったら、自分たちにタイトルがくるのかなと思いながらも、常に監督が最悪の事態を想定して、準備をし続けないといけない。良かったら進んで、ダメだったら立ち返って、ブレずにやらないといけない。勝ち続けることは一番難しいと思いますが、向き合ってやるしかありません。 「勝ち点を意識しろ、相手は気にするな、自分と向き合え」。なかなか無茶苦茶なことを言っていますね。 でも、相手を意識しても、変えられないので。今日も大分に退場者が出るなんて誰も思っていないですよね。だから、自分たちで意識できるもの、変えられるものに注力していくということです。相手がどうやってくるか、メンバーも、こちらが選べるわけではないので、自分たちのやり方を貫いていきたいなと思います。 ──今シーズン、悪い流れの試合でも勝ち切ることができている要因は? どうですかね。一つには、自分たちがなにで勝つかがわかっているからだと思います。しながわ戦も、アウェイの立川戦も、シュートを倍以上打たれましたが、最終的にディフェンスで勝てていることは、選手たちも感じていると思います。攻めでうまくいかなかったら、ディフェンスで勝つということが、彼らの中で最後の揺るぎない部分としてもっているから、内容が悪くても最後に体を投げ出して、点を決めさせない。 今日の菅谷(知寿)もそうですけど、彼がああいうプレーをするのを、しながわや立川の頃は見たことがありませんでした。でもこのクラブにきて、すごく泥臭くディフェンスをしてくれています。うまいだけでなく、そういう泥臭さ、タフさを体現してくれるようになりました。元々そういう菅谷としてチームにきたわけではなく、この1年で成長したからこそ、代表にいったという例なのかなと思います。 ロドリゴ、レアンドロに関しては、助っ人の仕事をしっかりしてくれています。そこは今シーズン好調な理由の一つだと思いますが、核を担っているのはハードなディフェンスをしてくれている日本人の選手たちです。名前を挙げたら全員になりますね。柴山(圭吾)もディフェンスはすげー下手くそだけど頑張ってついてきていますし、そこがチーム力の成長なのかなと思います。 だから、長坂(拓海)や本石が輝けるのだと思います。彼らしか点を取っていないようなイメージをもたれますが、彼らの後ろにはめちゃくちゃ守ってくれる選手たちがいて、いいパスを出してくれる選手たちがいる。長坂も本石も、取られたらダッシュで戻ってくるので、だからこそ、信頼してパスが出せる。その信頼関係が成立しているから、今の浦安があるんじゃないかなと思います。 今日もめちゃくちゃ厳しいことを言いましたけど、全選手に感謝しています。彼らがいなかったら、チームが勝つことはできないですからね。彼らにはいつも、本当に感謝しかありません。だからそんな彼らに、最高の景色を見せてあげたいというのはすごく思っています。
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