衆院選での各党経済政策比較:日本経済の将来像と中長期的な改革・戦略の具体策を国民に
政権を担う政党としての責任
このように、各党の経済政策を概観すると、消費税見直し、物価高対策、最低賃金引き上げなどといった目先の消費刺激策については非常に積極的に語っている印象が強い。他方で、中長期の視点から経済の活性化に資するような、規制改革を含む成長戦略、構造改革についての具体的な議論は限定的だ。さらに、構造改革を通じて将来的にどのような日本経済を目指すのかといった、日本経済の将来像を提示するといった視点も十分に示されていないように思う。 中長期的な経済の安定には、社会保障制度と財政制度の持続性が必要だ。しかし各党の政策では、それに必要な抜本改革の視点も欠いている印象だ。社会保障制度と財政制度の持続性を確保するためには、国民に相応の負担を求めることも必要となるが、そうした負担の議論を避けている限り、社会保障制度改革や財政の健全化は進まないだろう。 政権を担う政党には、国民に対して目指すべき経済、社会保障制度、財政制度の将来像を提示したうえで、それを実現する道筋を国民負担も含めて丁寧に説明していくといった責任ある姿勢が強く求められる。国民がそれを受け入れて、政権を任せるという判断をした時に初めて、痛みを伴う改革が実現され、それが持続的な社会保障制度、財政制度と日本経済の再生へとつながることになるのではないか。 そうした政策を、責任を持って担うことができる政党を選ぶのが、政権選択選挙である衆院選であるはずだ。しかし、各党の公約を見ると、国民が選択するための材料が十分に示されておらず、安心して政権を任せる政党を選ぶことは容易でないとも感じられる。 (参考資料) 「衆議院選挙2024 各党の公約特集」、2024年10月14日、日本経済新聞電子版 「特集――2024衆院選 党首討論の要旨 【経済政策】、【補正予算】、【政治改革】、【野党連携】、【政権枠組み】、他」、2024年10月13日、日本経済新聞 「首相「消費税、当面上げず」 各党党首が消費喚起策で討論」、2024年10月13日、日本経済新聞電子版 (参考資料) 「衆議院選挙2024 各党の公約特集」、2024年10月14日、日本経済新聞電子版 「特集――2024衆院選 党首討論の要旨 【経済政策】、【補正予算】、【政治改革】、【野党連携】、【政権枠組み】、他」、2024年10月13日、日本経済新聞 「首相「消費税、当面上げず」 各党党首が消費喚起策で討論」、2024年10月13日、日本経済新聞電子版 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英