衆院選での各党経済政策比較:日本経済の将来像と中長期的な改革・戦略の具体策を国民に
賃上げ・最低賃金の引上げ
石破首相は自民党総裁選時に、「2020年代に全国平均1,500円」に引き上げるという目標を掲げた。現在の政府目標である2030年代半ばから前倒しとなる。ただし、この目標については、自民党の選挙公約には書かれていない。公約では賃金について、「物価に負けない賃上げと最低賃金の引上げ加速」とのみ記されている。 他方、最低賃金の1,500円への引き上げは、他党も掲げる一種のスタンダードとなっている。公明党は、最低賃金を5年以内に全国平均1,500円に引き上げるとしている。それを通じて賃上げの勢いを中間所得層へ波及させ、物価上昇を上回る賃上げを実現するとしている。 立憲民主党は、「分厚い中間層」を復活させるとしたうえで、最低賃金を1,500円以上とし、適切な価格転嫁で賃金の底上げを実現するとしている。 共産党は、最低賃金を時給1,500円以上に引き上げ、地方格差をなくし全国一律最低賃金制度を確立するとしている。また、時間外や休日の労働の上限を規制し、1日2時間を超える残業割増率を50%に引き上げる、とする。 れいわ新選組は、全国一律の最低賃金1500円を導入するとしている。 社民党は、全国一律で最低賃金を1500円に引き上げるとし、非正規雇用の正規雇用への転換を促進するとしている。 多くの政党が同時に最低賃金1500円までの引き上げを主張するのは奇異な感じがするが、最低賃金1000円が既に実現したため、次の目標として1500円を掲げているのだろう。 しかし、政府が最低賃金の目標を掲げるのは必ずしも適切でないように思われる。安倍政権の時から、政府は最低賃金の引き上げを通じて賃金全体を底上げすることを目指してきた。最低賃金の決定過程では、政府が間接的にそれに関与することができる。しかし、最低賃金の決定に政治が関与するとしても、それは賃金全体の底上げではなく、最低賃金で働く人に適切な生活を保障することや、最低賃金で働く人とそれ以外の働き手との間の所得格差を縮小させるという社会政策の観点であるべきだ。