衆院選での各党経済政策比較:日本経済の将来像と中長期的な改革・戦略の具体策を国民に
社会保障制度の改革
中長期的な国民生活の見通しに大きな影響を与える社会保障制度改革については、衆院選挙の大きな争点となっていないことが残念であり、国民の関心とズレている面があるのではないかと感じる。 自民党は基礎年金の受給額の底上げを図るとしているが、具体的な政策は明らかではない。 日本維新の会は、高齢者の医療費窓口負担を現行の1割負担から原則3割負担に見直すとしている。年金は抜本的に改革して、世代間格差が生まれない積み立て方式または最低所得保障制度を導入するとしている。 れいわ新選組は、75歳以上の医療費負担を1割にする、社会保険料を国庫補助で引き下げるとしている。 国民民主党の玉木代表は、高齢者医療制度を見直し、現役世代の社会保険料負担を引き下げる。また、減税と負担の軽減で若者の手取りを増やす、としている。 社民党の福島代表は、政府が介護報酬を減額することで事業所の倒産が増えていることから、介護保険を立て直す、としている。 社会保障制度について、包括的かつ具体的な提案をしているのは、日本維新の会のみであり、他党は負担増加の議論を避けているようにも見える。これでは、政権を担う政党を選ぶための重要な基準の一つが国民に示されていないと言えるのではないか。
財政政策
自民党は「経済あっての財政」との考えに立ち、経済成長と財政健全化の両立を目指す、としている。石破首相が総裁就任前に主張していた「財政健全化」の姿勢がやや後退した印象も受ける。 国民民主党は、年5兆円程度の「教育国債」を発行し、子育て予算と教育・科学技術予算を倍増するとしている。 参政党は、基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)の黒字化目標を撤回し、積極財政による経済成長を実現するとしている。 財政健全化策を正面から掲げる政党はいない。
地方創生と規制改革
地方創生は、石破首相のライフワークとも言えるものであり、自民党の公約の中でも強調されている。その公約には「地方創生2.0」の始動、地方創生交付金の倍増や「新しい地方経済・生活環境創生本部」の創設などが謳われているが、いずれも石破首相の肝いりだ。ここには「石破カラー」が明確に表れている。他党については、地方創生策は強くアピールされていない。 規制改革は、生産性向上に資する重要な成長戦略、構造改革であるが、この点について、自民党の主張は、岸田前政権と同様にかなり弱いと感じる。政策パンフレットには、規制改革という言葉自体が見当たらない。 規制改革に最も前向きな野党は日本維新の会だろう。同党は、ライドシェアに象徴された旅客運送業をはじめとする既存産業への参入障壁撤廃など、既得権にとらわれない大胆な規制改革で経済を成長させ、現役世代の給料を倍増するとしている。これは、規制改革を成長につなげ、それを通じて賃上げを実現させるという構造的賃上げの考えに基づいているものであり、評価できる。