銀シャリ・橋本直さんに「食」のこだわりと店選びのポイントを聞いてみた!「神ツッコミ」満載の初エッセイ本も売れ行き好調
●初著作『細かいところが気になりすぎて』を上梓した漫才コンビ・銀シャリの橋本直さんに、食へのこだわりを聞いてみた!
2016年に「M-1グランプリ」で優勝して以来、ワードセンスに満ちた「神ツッコミ」で幅広い世代から人気を集める、銀シャリ・橋本直さん。雑誌『波』で連載していたエッセイに書き下ろしを加えた全20編を収録した初著作『細かいところが気になりすぎて』(新潮社)を上梓しました。 神ツッコミ満載の新刊本を見る 日常のちょっとしたツッコミポイントを見逃さずに確実にツッコミ続ける橋本さん。エッセイには、立ち食い蕎麦屋さんに行ったときの珍事や、大好きなラーメンの驚きのエピソードなども多数収録。そんな橋本さんに「食」へのこだわりや好きなお店について聞きました。
文章は永遠にツッコめるんでやりすぎた
――初のエッセイ本ですが、エッセイでも最初から最後までずっとツッコんでいますね。漫才のツッコミと書くときのツッコミの違いはなんでしょうか。 テレビでは他の人がしゃべってる合間を縫って、「一言で落とさな」とツッコむんですけど、文章は永遠にツッコめちゃうんで、歯止めがきかない。テレビだったら1つ例えて終わりのところを、エッセイでは3つぐらい違う表現で例えちゃったところがあるんで、やりすぎたなと思いましたね。 ――やりすぎたんですね(笑) でもデトックスできた感じがあります。ふだんは抑えているんで。 ――全部出し切ってみて、改めて書くことは楽しいと思えましたか? 字面の感じでボケたりツッコんだりできる要素は楽しかったです。でも「これでちゃんと情景が浮かぶかな?」と考え出すと説明がくどくなってしまう。そこは難しかったですね。
僕の人生において「食」がだいぶ占めてる
――ラーメンなど「食」をテーマに掘り下げた作品もいくつか収録されていますね。 自分では意識してなかったんですが、連載のときは食べ物の話が連続してしまい、「また食べ物!」と編集者さんによう怒られました。それぐらい食べ物が好きなんですよ。僕の人生において「食」がだいぶパーセンテージを占めてる。大事なものだから期待するし、その分、裏切られたときの切なさも大きい。(相方の)鰻はそれがないんです。僕は地方に行くとその土地のおいしいものや名店を調べるけど、鰻はどこにいてもチェーン店に行くので。 ――「汁」という作品がアツかったです。牡蠣の描写で「鼻孔からラッセンが如く海のお出汁のイルカが飛び出しそう」という表現が秀逸すぎて何度も読み返して笑ってしまいました。 「ラッセンが如く……」というのは、ラジオでも言ったことないから、文章を書いててそう思ったんでしょうね。そもそもタイトルが漢字一文字で「汁」のエッセイってないですよね。 ――食べている最中からツッコんでるんですか? それとも後から味を思い出してこんな表現が出てくるんでしょうか。 いや、思い出した時ですね。食べてるときは直感的な感動があるじゃないですか。それを他者にどう伝えるか、あとで考えたときにそういう表現になったんです。1人で食べてるときに「ラッセンが如く……」なんて言い出してたら僕ヤバイですよ(笑) ――1人で食べるときはどういうふうに食べてらっしゃるんですか?『孤独のグルメ』のようなナレーションが頭をよぎるとか? そんな感覚に近いかも知れないですね。「アタリ」のお店を引いたときはもう楽しい。このあいだ神戸で初めて入った店はアタリでした。仕事で夜中に神戸に着いて、遅くまで開いている店の中から直感で入ったら、お刺身からイタリアンまでメニュー豊富な店でどのメニューもおいしくて。 「突き出しのパクチーのサラダは全部食べずに取っておいて、餃子を注文したときにパクチーをのっけて食べたらいいな」とか「餃子のタレはこっちの料理にも合うな」とか、組み立てを考えてたらどんどんおもろくなってきて、食べながら脳内に浮かんだことを全部書き出してみたんです。そしたら、またエッセイ本ができるな。ガイドブック的な本にもできそうだなと思って、そのとき初めてバーって携帯にメモりました。 ――「初めてメモった」ということは、ふだんはメモせずに記憶の中に残しておくんですね。 そうですね。写真もあまり撮りません。最近は食べることが楽しすぎて、しゃべりたなってきました。「見せたい」じゃなくて「しゃべりたい」んです。後輩たちと行った居酒屋でも一応後輩くんに「料理の写真、撮っといてくれへん?」って頼むんですけど、YouTubeみたいに食べてるところを動画で回されるのは面倒くさい。食べ物に集中したい。だから、動画じゃなくて写真としゃべりで伝えたいなと思ってます。それか写真もなしで、ラジオみたいにしゃべりだけで伝えるのもアリかな。見せるより言葉で脳内を刺激した方がウマそうだなと思って。