【新春対談 阪神・森下×女優・伊原六花(3)】いつかは世界へ 飛躍を期し、甲子園での再会を誓った
(2)からつづく 森下 伊原さんは登美丘高時代に「バブリーダンス」がブレークした時、どういう心境でしたか? 伊原 正直、何が起こっているのかわかっていなかったんです。ダンスを見に来てくれる人がいたり、私たちの名前が勝手に知られていたり…。ただ、その時は歌番組をはじめ、いろいろなイベントに呼んでいただいても、高校生がお金を頂くわけではないので、私たちの感覚や生活は変わりませんでした。年末の紅白歌合戦やレコード大賞に出演させていただいて“素晴らしい経験だったんだ”と、ブームが過ぎてから気づきました。森下選手は昨年も阪神で成績を残し、日本代表(※4)の4番としてブレークされましたね。やりがいはありましたか? 森下 打順のこだわりはないと言っていましたが、やりがいは凄くありました。自分の中でも「4番」は特別な打順です。その「4番」で、侍ジャパンで唯一、全試合で先発出場させてもらって、いい経験になりましたが、まだ実力が足りないと感じました。自分より打っている打者は世界にたくさんいて、打てなかった投手もいる。今はその投手をどう打つか、そこに目を向けています。自分は結果より、準備やプロセスにこだわりがあります。準備ができていれば自然と結果は付いてくると思っています。ところで伊原さんは、出演された番組を後から見ることはありますか? 伊原 はい、見ます。客観的に見て“こう見えるんだ”と。自分が“こういうプランで芝居をした”や“現場の空気はこういう感じだった”というのは覚えているので、それが映像になった時、現場では割とゆったりとした時間が流れていても、編集で“間”が縮まっていたりすると、また見え方が変わるんですよね。そこで“何がベストだったのかな”と自問自答します。 森下 野球だったら自分の打席だけを見ればいいですけど、役者の方は振り返る時間が長くなりますね。 伊原 例えば私が一人で芝居をしている時、周りで私を見ている人の顔を撮るシーンがあるとします。私は自分の演技で必死なのに、出来上がった映像を見た時に、私を見ている人の表情の方が素晴らしかった時は悔しいですね。私が演技をしている時に“周囲の演者はこういう顔をしていたんだ”ということを目の当たりにすると、“自分はもっとできたんじゃないか”と勉強になります。森下選手から「準備」と「分析力」の話を聞かせてもらい、すてきな考え方だなと。だからこそ結果が付いてくるんだなと思いました。 森下 将来的にはハリウッド女優など、世界進出を目指しているところはありますか。 伊原 これは難しい話ですね。私は芝居も凄く好きなんですけど、同じくらいに歌やダンス、アートも凄く好き。好きなものがとにかく多いんです。森下選手みたいに一つのことを極められている人にも憧れがあるんですけど、芸能界は全てが一つの仕事。芸術も芝居も歌もダンスも仕事になる業界。全てにリスペクトを込めて頑張りたい。ミュージカル、音楽など、オールマイティーに活躍できる女優でいたい。デビューしてから掲げている目標です。 森下 何か一つ、飛び抜けたいというより、いろんなことを極めていきたい、と。 伊原 飛び抜けたいけど、難しいですね。ハリウッド進出やアカデミー賞(※5)を目指すというより目の前のことを一生懸命にやって、つながった縁がそこだったらいいと思います。森下選手も世界での活躍を目指していらっしゃるんですよね。 森下 26年3月の「第6回WBC(※6)」のメンバーに入りたいです。昨年11月に「第3回プレミア12(※7)」で戦って、世界大会は凄く楽しかった。日本代表は“選ばれたい”と思って選ばれる所ではないので、結果を残すために、ストイックに、練習の効率をより突き詰めたくなりました。WBCの存在があることによってそう思えるようになったと感じます。WBCの最終メンバーに入って世界一になることが大きな目標です。伊原さんは、阪神の試合をご覧になったことはありますか。 伊原 子供の頃に家族で甲子園球場に行きました。ジェット風船を飛ばした思い出があります。森下選手が入団されてからは見に行ったことがないんですけど…。 森下 甲子園にご招待します!僕、関西の友達は少ないですし、せっかくなので、招待チケットを出しますよ。 伊原 本当ですか?父がずっと野球をしていて、今回ご一緒すると伝えたら、凄く喜んでいました。 森下 じゃあ、是非お父さんと2人で。(自分が入団後に)見たことがないんだったら、見てほしいですね。では最後に、今年の目標をお互い言いましょう。 伊原 20代は好き嫌いをせず、いただいたお仕事は全てやることを目標にしています。“苦手かも”と思ったことが先につながったことが何回かありました。好き嫌いで制限するのはもったいない。20代は何でもやって、30代で選択ができる余裕ができたら一番いいですね。2025年も変わらず、求められていることは全部受けたいと思います。 森下 僕は全試合先発出場、打率3割。ここが一番ですね。昨年もファームに落ちました。そういう選手は1軍に定着しているとは言えない。「投高打低」と言われている今のプロ野球界での「打率3割」は凄く価値がある。そこに打点、本塁打が付いてくれば理想的です。 =終わり= (※4)24年11月の国際大会「第3回プレミア12」で侍ジャパンにプロ入り後2度目の選出。10日チェコとの強化試合第2戦(バンテリンドーム)で4番に抜てきされ、初回の初打席で左中間へ2ランを放った。大会でも9試合すべてで4番を務め打率・357、1本塁打、9打点。13得点で最多得点と外野手のベストナインに選ばれた。 (※5)1929年設立の米国の団体、映画芸術科学アカデミーによる、米国映画の健全な発展を目的とする映画賞。副賞の立像「オスカー」が有名。日本版の「日本アカデミー賞」も47回の歴史を持つ。 (※6)26年3月に開催予定。20の国と地域の代表が世界一を争う。日本は前回23年の第5回のほか、06年第1回、09年第2回の3度優勝。 (※7)24年11月に行われた国際大会。当時の世界野球ソフトボール連盟(WBSC)世界ランキングの上位12カ国・地域が参加した。日本は決勝で台湾に敗れ2位。2連覇を逃した。 【取材後記】 豪華“マッチアップ”は最後まで盛り上がった。時折、天然発言をする森下の“珍回答”に対し間髪を入れず、ツッコミを入れる伊原の掛け合いはまさに夫婦漫才。予定していた対談時間は、あっという間にオーバーした。 プロ野球の世界で「超」が付く一流プレーヤーを目指す森下と映画、テレビ、ラジオ、舞台などで活躍するマルチプレーヤーの伊原。ともに共通している点は「これだ!」と決めたことに対して飽くなき向上心を持ち、目標へ向かう上で何よりプロセスを大切にしているところ。対談を聞いていたこちらも勉強になることばかりだった。 近い将来、2人は日本を代表するプロ野球選手と女優になるに違いない。10年後、5年後…いや3年後か。その時にもう一度、対談を実現させてみたい。(阪神担当・石崎 祥平) ◇森下 翔太(もりした・しょうた)2000年(平12)8月14日生まれ、神奈川県出身の24歳。東海大相模、中大を経て22年ドラフト1位で阪神入団。新人の23年はDeNAとの開幕戦で「6番・右翼」でデビュー。94試合で10本塁打、41打点。同年オリックスとの日本シリーズは7打点の新人最多記録で日本一に貢献。24年は8月13日の巨人戦で初の4番など129試合で16本塁打、73打点。11月のプレミア12では全試合で侍ジャパンの4番を務めた。1メートル82、89キロ。右投げ右打ち。 ◇伊原 六花(いはら・りっか)1999年(平11)6月2日生まれ、大阪府出身の25歳。幼少期からバレエや子供ミュージカルを習う。大阪府立登美丘高校時代にはダンス部キャプテンを務め、17年8月の「日本高校ダンス部選手権」で発表した自身がセンターを務める「バブリーダンス」が注目を集める。17年から芸能活動を開始し、18年のTBSドラマ「チア☆ダン」で女優デビュー。24年4月からはMBSラジオ「伊原六花のMBSヤングタウン」でパーソナリティーも担当。「となりの人間国宝さん」でおなじみのカンテレの人気情報番組「よ~いドン!」ではレギュラーも務める。1メートル60。血液型A。