「役職定年制廃止」は“加速”する!シニアが「失うもの」とは…経済アナリスト「生涯年収格差が広がる時代に」ジョブ型雇用社会へ
少子高齢化と人口減少が同時に進む日本で「役職定年制」を見直す動きが進んでいる。年功序列型人事の弊害や組織の新陳代謝を念頭に置いた制度だが、国は労働力不足をにらみ働く意欲のある高齢者が活躍できるよう65歳までの雇用確保を義務化し、70歳までの就業機会確保を求める。約3人に1人が高齢者という社会が到来する中、企業は役職定年制や定年の見直し、職務を明確化するジョブ型雇用といった人事・給与制度改革が急務だ。経済アナリストの佐藤健太氏は「『50代の壁』が見直されれば、能力・成果主義に基づく評価システムが一層進むだろう。その時に勝ち抜くだけの『体力』が求められる」と指摘するーー。
役職定年と本来の定年によって2度のショック
役職定年制は、一定年齢を超えた場合に部長級や課長級といった管理職が役職を外されて専門職に就いたり、降格になったりする制度だ。1986年に成立した高年齢者雇用安定法に伴い、定年を定める場合には60歳を下回らないようにする努力義務が課され、大企業を中心に役職定年制が導入されてきた。 法定ではないものの、多くは55歳前後で役職を離れるケースが目立つ。これが「50代の壁」だ。企業側は従業員の加齢に合わせて上昇していく賃金を抑えられ、次の世代にポストを譲ることができる点がメリットと言える。だが、問題は従業員の給与とモチベーションが下がる点にある。 公益財団法人「ダイヤ高齢社会研究財団」と明治安田生活福祉研究所の調査(2018年)によれば、役職定年で4割の人の年収が半分未満に減少し、6割がモチベーションを低下している。対象となる年齢や役職、その後の待遇は企業それぞれとなっているが、年齢によって年収が「役職定年前の半分」にまで下がってしまうのは衝撃的だろう。役職手当の比重が大きい企業で働く人は生活そのものを大きく見直さなければならない。 この「50代の壁」がシビアと言えるのは、役職定年制度に伴う専門職への移行や配置転換、子会社への出向などが生じれば、まもなく受け取ることができる年金受給額にも影響する点にある。年収がダウンしていけば、受給できる厚生年金部分(2階部分)の受給額が元々の見込額よりも減ることになるのだ。定年後に再雇用されたとしても所得は「定年前の3~5割減」というケースは珍しくない。つまり、役職定年と本来の定年によって2度のショックに襲われることになる。
【関連記事】
- コロナ前に早期退職に応募した2万人が直面している「内定獲得率1%の地獄」…IT使えない、給料高い、プライド高い「退職金食いつぶす日々」
- 給与ダウンは無理!年収1500万大企業部長、転職期間2年で時給1000円警備員に…地獄すぎる中高年転職市場に絶望
- いつまで上司づらしてんだよ…定年再雇用「大多数は年収200万台に」デジタル機器使えずに”いらない”と烙印「シニア社員の大暴走」
- 「実績だせなければまた辞めさせられる」大企業管理職、早期退職後の再就職先もやっぱり地獄だった…私はいらない人材なのか
- 中小企業に歓迎されると思った…大企業部長が早期退職後、転職市場で秒殺される3つのワケ「失業期間2年、年収1500万→500万」