「役職定年制廃止」は“加速”する!シニアが「失うもの」とは…経済アナリスト「生涯年収格差が広がる時代に」ジョブ型雇用社会へ
「偉くなりたい人」が減少している
ただ、役職定年制の廃止で問題となるのは「偉くなりたい人」が減少している点にある。パーソル総合研究所が実施した「働く10,000人の就業・成長定点調査2024」によれば、「現在の会社で管理職になりたい」と回答した人は17.2%にとどまった。その割合は3年間で7ポイント低下し、特に20代の若手社員で管理職を希望する人の割合は大きく低下しているという。責任の重さ、業務時間の長さ、キャリアに関する価値観の違い、仕事と育児・介護のバランスが取れない、といった背景があるとされる。 もちろん、まだまだ「偉くなりたい」と願う人はいるだろう。ただ、少子高齢化と人口減少が同時に進む社会においてはシニアをどのように活用するかがポイントだ。年齢を重ねた上司が多すぎる歪な組織となれば、世代交代が進まず若手・中堅社員の意欲は削がれる。一方で、自分の上司が「かつての部下」となればシニアのモチベーションが低下する。 役職の交代時期や理由を明確化し、組織の活性化を図るためには、能力・成果主義に基づく人事評価システムの導入が急務だ。組織と従業員にとってバランスの良い評価制度、賃金体系を整える必要があるだろう。
公務員は年齢で一律の「役職定年」を継続
ちなみに、国家公務員の定年は2023年4月から段階的に引き上げられ、2031年度からは65歳になる。公的年金の受給開始年齢が原則65歳のため、定年退職後に無収入となる期間をなくすための措置だ。 内閣人事局が2022年4月にまとめたパンフレットによると、幹部職員は60歳(事務次官などは62歳)の誕生日から最初の4月1日までの間に管理監督職以外に異動させられる。年齢がくれば「課長補佐級以下」に降任させられ、年間給与は60歳前の70%水準に設定される。 60歳超の職員の年間給与モデルを見ると、60歳前に月額41万3000円、年間667万円を稼いでいた地方機関係長は60歳超で月額31万円、年間約470万円にダウンする。本府省課長補佐は月額55万5000円(年間約890万円)から月額41万3000円(同約620)万円だ。 入省年次がモノを言う官僚の世界は別なのかもしれないが、民間企業には見直しを求めておいて公務員は年齢で一律の「役職定年」を継続することになる。
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