「役職定年制廃止」は“加速”する!シニアが「失うもの」とは…経済アナリスト「生涯年収格差が広がる時代に」ジョブ型雇用社会へ
給与減や降格、モチベーション低下しても転職しにくい
人事院の「民間企業の勤務条件制度等の調査」(2023年)によれば、事務・技術関係職種の従業員がいる企業のうち「定年制がある」企業の割合は99.4%で、 定年年齢が「60歳」の割合は75.7%、「65歳」の企業は19.6%になっている。「役職定年制がある」と回答した企業は16.7%に上り、「今後も継続」するとした企業は95.3%に上る。 役職定年の年齢は、部長級、課長級ともに「55歳」としている企業が最も高く、部長級は33.5%、課長級では40.3%となっている。その後の配置先は「同格のスタッフ職」とする企業も多いが、「格下のスタッフ職」とする企業の割合も高く、部長級は34.4%、課長級では36.0%となっている。 給与減や降格、モチベーションの低下によって転職を考えるシニアも多いのだが、一般的には55歳を超えると中途採用のハードルは高い。会社に残るシニアはそれまでと比べて生産性が低下することがあり、「過去の話ばかりする人」「働かないオジサン」と若手社員から見られてしまうケースも少なくない。日本が右肩上がりの成長を遂げていた時代は良かったものの、2021年には改正高齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会確保が努力義務となった。進む少子高齢化や構造的な人手不足をにらめば、役職定年制などの改革は組織にとって避けては通れない重要課題と言える。
「ジョブ型雇用」に移行する企業も
2024年2月、政府の「新しい資本主義実現会議」で当時の岸田文雄首相は「企業側には人手不足の中で、仕事をしたいシニア層に仕事の機会を提供するため個々の企業の実態に応じ、役職定年・定年制の見直しなどを検討いただきたい」と求めた。要するに、深刻化する構造的な人手不足をにらみスキルに応じた処遇が重要になるということだ。 ダイキン工業は2023年11月、56歳としていた役職定年を廃止し、賃金などの前提となる資格等級制度も65歳まで継続すると発表。大阪ガスは今年9月、定年年齢を65歳まで段階的に引き上げるとともに役職定年制を廃止し、能力基準の役職登用を行うことを明らかにした。NECや大和ハウス工業なども役職定年制を廃止した。年齢にとらわれない人材配置、職務や成果を明確化する「ジョブ型雇用」に移行する企業も目立つ。
【関連記事】
- コロナ前に早期退職に応募した2万人が直面している「内定獲得率1%の地獄」…IT使えない、給料高い、プライド高い「退職金食いつぶす日々」
- 給与ダウンは無理!年収1500万大企業部長、転職期間2年で時給1000円警備員に…地獄すぎる中高年転職市場に絶望
- いつまで上司づらしてんだよ…定年再雇用「大多数は年収200万台に」デジタル機器使えずに”いらない”と烙印「シニア社員の大暴走」
- 「実績だせなければまた辞めさせられる」大企業管理職、早期退職後の再就職先もやっぱり地獄だった…私はいらない人材なのか
- 中小企業に歓迎されると思った…大企業部長が早期退職後、転職市場で秒殺される3つのワケ「失業期間2年、年収1500万→500万」