「コース係が突然バツ印を…」箱根駅伝アンカーでまさか「踏切で足止め」大東文化大・田子康晴が振り返る“その時”「悔しかったのは踏切のことより…」
「監督がトイレに行きたくなって…」
前の走者を次々にとらえてかわす。9人をごぼう抜きする力走を見せ8位まで浮上した。タイムは1時間3分26秒。区間2位の好記録だったが、走り終えてからトップとわずか「1秒差」だったことを知った。 「区間賞は後ろを走っていた國學院大学の選手でしたが、走っている時にそこまで競っていたなんて知らなかったんです。監督車からも一回も声をかけられなかったので、タイム差は把握していなかった。どんどん抜いていったので監督車が入っていけなかったこともあるのですが、実はもう一つ理由があって……。監督が途中でトイレに行きたくなって降りていたみたいで(笑)」
“踏切”より悔しかったこと
後に只隈監督からは「トイレに行っちゃって一度も伴走につけなかった。お前が区間賞取れなかったのは俺の責任だ」と謝られたのだという。 「ですよね、って(笑)。今だから笑い話ですけど、あれは本当に悔しかったですね。分かっていたら最後の力を振り絞ってタタタタッといけたかもしれない。トラウマじゃないですけど、今でもふとした時に思い出すんです。あの時あと1秒頑張っていたら、って。3回出場した箱根駅伝であれが一番悔しい思い出です。踏切じゃないです。だって1秒ですからね……」 (つづく) 〈→後編は、故郷で消防士になった田子さんの“その後”を追った〉
(「箱根駅伝PRESS」佐藤春佳 = 文)
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