はぐれないようにリボンで結ばれた魚たち 澄んだ夜空に探したい親子の絆
夜はすっかり冷え込んで空気が澄み渡り、星がキレイに見える季節になりました。昼の時間も短く、早い時間から星たちと出合うことができます。最近は宵の明星・金星が、夕空にとても明るく輝いています。そして、太陽が沈んでから午後9時ごろまでは、秋の星座が南から西の空にかけて名残惜しそうに輝いています。 今日はそんな秋の空に隠れた、お誕生日の星座たちをご紹介しましょう。
親子の絆を描いた星座
秋の四辺形のすぐ近くに、お誕生日の星座でおなじみの「うお座」があります。南を向いて秋の四辺形を見つけたら、その下と左側(東側)にかけて「く」の字に星が並んでいるのがうお座です。2匹の魚がリボンで結ばれた姿が描かれています。街中では見つけることが難しい星座ですが、秋の四辺形がわかれば、うお座のおおよその場所がわかります。左手でピースサインをつくったら、秋の四辺形の左下の角をはさむように空にかざしてみましょう。その自分の手のところにうお座がいると思って眺めてみてください。 うお座となっている2匹の魚は、愛と美の女神アフロディテ(ヴィーナス)とその子どもエロス(キューピッド)です。以前ご紹介した、やぎ座のパーンと一緒にナイル川のほとりで開かれている神様たちの宴会に参加していました。その宴会に怪物テュフォンが現れて、神様たちが思い思いの姿に変身して逃げるときに、アフロディテとエロスは魚に変身をして川へ飛び込みました。その時、アフロディテは、エロスと離ればなれにならないよう、リボンでお互いをつないで逃げたとされています。 大切な子どもを想う、そんな親子の絆が描かれた星座です。ぜひご家族と一緒に探してみてください。
黄金の羊
東の空に、3つの星が仲良く並んだ星の並びが特徴のオリオン座がよく見えてきました。オリオン座のその3つの星を結んでそのまま右側に伸ばしていくと、赤い一等星アルデバランが見つかり、さらに伸ばすと星の集まりプレアデス星団(すばる)が見つかります。そこには「おうし座」の姿があることは以前にご紹介しました。 おうし座のプレアデス星団と、先ほどご紹介したうお座の間に、黄道星座の第一番目の星座「おしつじ座」があります。おひつじ座も明るい星はなく、街中で探すのは難しい星座です。頼りになるのは、プレアデス星団。その右側(西側)をよくみると、スポーツブランド「ナイキ」のマークを裏返しにしたような星の並びが見つかります。そこに描かれているのが、金色の毛が輝く羊の姿です。ぜひ街中で隠れた黄金を探してみてください。 おひつじ座は、神の使いで、自由に空を飛ぶことができ、人間の言葉も話せる金色の牡羊として物語に登場します。ギリシアにあるテッサリア国の王・アマタスには、王妃・ネフェレーとの間に2人の子供、プリクソス王子とヘレー王女がいました。ある時、アマタス王は王妃と別れ、テーバイ王の娘・イーノを後妻として迎えました。 しかし、継母となったイーノは前王妃の子である兄妹が邪魔でしかたがなく、この兄妹を消そうと悪だくみを考えました。そのことを知ったネフェレーは「どうか私の大切な子供たちをお守りください。」と大神ゼウスに祈りました。するとゼウスは、兄妹を避難させるために、金色に輝く牡羊を子供たちのもとへ遣わしました。 金色の牡羊は、継母の策略で殺されそうになっていた兄妹を乗せ、黒海のコルキスの国を目指して空を飛んで行きました。ところが、あまりの速さに、妹のヘレーは牡羊の背から海に落ちてしまいました。ヘレーが落ちた海は、へレスポントス(現在のダーダネルス海峡)と呼ばれていました。残された兄のプリクソスは、牡羊に励まされ、ひとりでコルキスの国へと降り立ちました。そして、コルキス王の娘と結婚し幸せに暮らしました。その活躍から、おひつじ座として星座にされたといいます。 東京の街中から見た四季の星座をご紹介してきたこの連載も、今回でおしまいとなります。街中から見つけやすい星、見つけることが難しい星もありますが、どんな場所にいても、晴れていれば星と出合えるはずです。お天気が悪い日に星を見たいときは、プラネタリウムに足を運んでみてくださいね。果てしない宇宙の星。そんな星を身近に感じてもらえて、星を見るきっかけになったら幸いです。一年間、お付き合いいただきありがとうございました。 (完)【連載】東京で見える星たち(葛飾区郷土と天文の博物館・湯澤真実)