井上尚弥、村田諒太の世界戦でNHKが57年ぶりにボクシング中継を解禁する理由と意義
WBSSの決勝(7日・さいたまスーパーアリーナ)、WBA、IBF世界バンタム級王者、井上尚弥(26大橋)対WBA世界同級スーパー王者ノニト・ドネア(36、フィリピン)戦とWBA世界ミドル級王者、村田諒太(33、帝拳)の初防衛戦(12月23日、横浜アリーナ)の2試合がNHKで生中継されることが1日、NHKから発表された。NHKのBS放送である「BS8K」で生中継されるもので、NHKがプロボクシング放映を解禁するのは1962年2月に行われた東洋ミドル級王者の海津文雄(笹崎)対権藤正雄(平安)のミドル級戦以来、実に57年ぶりとなる。この2試合は地上波ではフジテレビが生中継を行い、また数日後に有料放送のWOWOWも録画放映する。3つの放送各社による中継など前代未聞だ。 NHKは、1953年9月19日に大阪スタヂアムで行われた白井義男対レオ・エスピノサのノンタイトル戦を日本で初めてテレビ中継した。その後、高視聴率の取れるプロボクシング中継に民放各局が、次々と乗り出したが、選手が所属するジムと独占中継契約を結ぶ傾向が生まれてきたため、NHKは、前述した1962年2月の国内のミドル級の試合中継を最後に撤退すると、以降、ボクシング中継を復活させることはなかった。 大阪帝拳の故・吉井清会長が、1984年にWBA世界スーパーフライ級王者、渡辺二郎氏の日本初となるWBC王者との統一戦の放映をNHKに持ちかけて交渉したが、「ボクシングビジネスは、コンプライアンスにひっかかる部分が多く、社としてボクシングの中継は行わない方針」と断られている。当時は、赤井英和氏の世界戦のトラブルでテレビ朝日系列も、ボクシング中継から撤退するなどしていた 。興行としてのボクシングは、反社会的勢力との関係性が取り沙汰され、リングサイドに反社会的勢力の人間が座るなどの問題もあり、公共性を重要視するNHKが手を出しにくい状況になっていた。 だが、JBC(日本ボクシングコミッション)が、反社会的勢力の排除に積極的に乗り出し、プロボクシングの人気回復、発展のためにNHKサイドに中継復活を働きかけてきた。 そういう経緯を考えると、今回のNHKの中継解禁はボクシング界にとって大きな意義がある。