あなたはひとり時間を楽しめますか?【Dr.純子のメディカルサロン】
◇自分と向き合う時間も大事
海原 先日発表されたイスラエルの調査の対象は高齢者でしたが、若い世代と高齢者世代でポジティブな孤独の重要さは同じなのでしょうか。 松隈 若い世代にとっても、ひとりの時間は非常に重要だと思います。これはメンタルヘルスの観点だけでなく、自己のアイデンティティー形成においても不可欠です。特に日本の学生は「独りぼっちだと思われたくない」「友達がいないと思われたくない」という理由から、ひとりでいることを避ける傾向が強いと感じています。日本にいる時も多くの学生と関わりましたが、「他人からどう見られるか」に多くのエネルギーを費やし、疲れてしまった子たちが何人もいました。そのため、他人の「好き・嫌い」が判断基準になり、自分の内的な感覚を感じられなくなり、就職活動で「やりたいことが分からない」と嘆く学生が多い印象を持っています。このように、ひとりの時間は若い世代にとって自分の感覚を取り戻すためにも非常に重要だと思います。 海原 ひとりで過ごすことについては文化的な背景による違いはあるとお考えでしょうか。 松隈 現在勤務しているフィリピン大学では興味深いことに、「他人からどう見られるか」という観点よりも、「寂しいというネガティブな感情を味わいたくないので、人と一緒にいたい」と考える学生が多い印象を持っています。昔ながらの拡大家族やラテン文化の影響かもしれませんが、多くの人が大勢と過ごすことに喜びを感じているようです。ただし、キリスト教が日常生活に深く根付いているため、「ポジティブな孤独」も重要視されています。大人も子どもも、問題があるときはひとりでお祈りをしたり、聖書を読んだりして、互いに「ひとりの時間」を尊重しています。学校行事でもリトリートなどがあり、小さい頃からひとりの時間の意義を学ぶ機会が多いのではないかと感じています。 海原 なるほど。お祈りはメディテーションやマインドフルネスと通じるものがありますね。そうした時間はひとりで自分の心と向き合う時間になるのでしょう。 松隈 はい。長い時間をかけなくても、そういう時間を大切にしたいですね。