じつは怖い…50代からどんどん老いていく「自律神経」、もっとも危ない「体のサイン」の見抜き方
自律神経のバランスとトータルパワーの関係
もう少し詳しくお話しすると、より大切なのは副交感神経のパワーを上げることです。 現代生活はストレスも多く、不規則な生活習慣になりがちで、交感神経が優位になる場面が比較的多いのが現状。ですから、交感神経が大きく落ちることは考えにくいとされています。 一方、副交感神経は加齢によって極端に落ちていくので、50歳からのエイジング戦略では副交感神経の働きを高めることに重点を置くべきなのです。 実際のところ、交感神経と副交感神経、両方の働きが高い人もいれば、逆に両方低い人もいます。どちらか一方だけが低い人もいます。具体的には次の4つのタイプに分かれます。 (1)交感神経・副交感神経ともに高い どちらの働きも良好で、かつ一日の中での切り替えもうまくできていて、バランスがとれている状態。心身ともに絶好調な状態。 (2)交感神経が高く、副交感神経が低い ストレスを抱えた人に多く、交感神経が高ぶりやすい状態。副交感神経が弱くブレーキが効かないため、不安や焦り、イライラを感じやすい。血流が悪くなるため回復力が弱まり、健康状態に悪影響が生じやすい。 (3)交感神経が低く、副交感神経が高い 副交感神経が極端に高い場合、意欲が上がらず、無気力感やだるさを感じやすく、抑うつ状態に陥りがち。朝なかなか起きられないなど生活に支障が出ることも。 (4)交感神経・副交感神経ともに低い どちらも極端に低い場合、常に疲れていてぐったりした状態に。さまざまな病気の発症リスクも高まる。 一般的には、加齢により副交感神経の働きが衰えて、交感神経優位の状態に偏りがちになるので、(2)のタイプが増えていきます。そしてさらに老化した状態が、両方の働きが低い(4)のタイプです。 何か大きな病気をしたときなども、(4)のように、自律神経のトータルパワーは大きく低下した状態になることがあります。(4)は疲れているうえにやる気も起きないという、モチベーションがかなり落ちている状態ですが、モチベーションが上がらなければまず「何かをしよう」という気がおきません。 運動しようとか、体によいものを食べようとか、家を片づけようとか、そんな気にもならないでしょう。日々のやる気・元気・モチベーションを維持するためにも、(4)に至る前に自律神経が喜ぶ「習慣」を取り入れて、整えておくことが大切です。 …つづく<放置すると「命が縮む」可能性も…!じつは怖い50代からの「自律神経の衰え」を改善する、もっともシンプルな方法>では、自律神経と老化の関係性について解説しています。
小林 弘幸(順天堂大学医学部教授・日本スポーツ協会公認スポーツドクター)