阪神・原口文仁、国内FA権行使 より多くの出場機会を模索し、宣言残留も視野に決断
阪神・原口文仁内野手(32)が国内フリーエージェント(FA)権行使の手続きを行ったことが11日、分かった。阪神球団とは複数回の話し合いを行い、宣言残留も認められている。大病やあらゆる苦難を乗り越えてきた不屈の男が、より多くの出場機会を得られる形を模索し、大きな決断を下した。 【表で見る】今オフのFA権行使が注目される主な選手 虎でひと振りに懸け続ける道と、ここから切り開く別の道-。分岐点に立っていた原口が、悩み抜いた末に動いた。11日の午後、国内FA権行使へ向けた申請書類を球団事務所に提出した。 10月中旬に胸中を問われた際にも「野球人としてすごく大きな決断になると思う。自分が納得した上で進めるようにやっていきたい」などと語っていた。複数回に及んだ話し合いでも残留を求められ心が揺れたが、より多くの出場機会を得られる道を模索したいという気持ちが勝った。宣言残留も含め、他球団移籍の可能性を探っていく。 2010年に帝京高からD6位で入団。野手では現役最長の在籍年数となった。度重なるけがで育成枠も経験したが、16年4月末に支配下再登録を勝ち取り頭角を現した。18年には、08年の桧山進次郎に並ぶ球団記録のシーズン代打安打「23」をマーク。歴代の「代打の神様」に負けない打棒を見せてきた。 だが、まだまだレギュラーを目指すんだと、強く意気込んでいた26歳の冬に病魔が襲う。19年1月に大腸がんを公表。即手術に臨んだ。同年6月に1軍へのカムバックを果たしたが、シーズン後には、病期がリンパ節への転移も認められた「ステージ3b」で抗がん剤治療を行いながらプレーしていたと明かした。周囲や阪神球団への感謝の思いを強める経験だったが、人生観も変わった。「今を最高に楽しむ」ことがテーマになり、同じように病気で悩む人たちに希望を与える存在でありたいという「使命」が芽生えた。 今季、前半戦は大山の不調時に4番に入って本塁打も放った。ただ、チームが捕手2人制の期間に〝もしもの場合の捕手〟としてベンチを温める時間が長くなった。出場52試合で打率・241、2本塁打、9打点。それでも約2週間ぶりの出番でも快音を響かせ、2割5分を超えれば上出来とされる代打打率では「・279」をマークした。「バモス!」という円陣での声かけで仲間たちを日本一へ押し上げた23年の〝献身〟も記憶に新しい。原口がベンチにいてくれることほど、チームにとって心強いことはない。その一方で、原口個人としては、もっと1軍で試合に出て「使命」を果たさなくてはと、もどかしさが募っていた。 24年1月で手術から5年が経過。医師からも「完治」を告げられ体力面への不安はない。育ててもらった、苦しいときも支えてくれた阪神で現役生活を全うしたい思いは当然あるが、もう一度レギュラーを目指し勝負できる道がどこかにあるのなら、飛び込んでみたいという気持ちだ。