「北海道新幹線、札幌延伸はいつ?」 計画の遅れで自治体はがっかり、企業はやきもき 現地からのリポート
開業後の経済効果は好調も……
北海道新幹線の開業が、北海道経済に与える効果についてさまざまな試算がある。例えば、道がまとめた「北海道新幹線札幌延伸による経済波及効果調査」によると、建設工事では事業費約1兆5000億円の約1.7倍、約2兆5000億円の経済波及効果が期待されている。雇用創出効果でも約19万7000人を見込み、開業時期が早いほど税収が大きくなるとしている。 日本政策投資銀行(DBJ)の調査では、開業初年度の経済波及効果は推計で約350億円。当初試算していた136億円の倍以上となる効果をもたらしたことが明らかとなった。 このまま経済効果がうまく発現し、北海道新幹線が札幌に延伸した後も北海道経済が潤うことに期待があった。沿線自治体もまちづくりを通じ、まちおこしをしようとさまざまな計画を策定。並行して進んでいる工事の状況も良好なはずだった。 ところが、想定はとん挫することになる。2021年、羊蹄トンネルで岩塊が見つかり、約2年もの間、工事が停滞した。この件について、2022年に有識者会議が報告書を公表している。 報告書によると、2012年の着工から約10年が経過しており、着工後に生じた資材価格などの上昇、働き方改革への対応などで追加として約6450億円もの事業費が必要だという。トンネル掘削の中断などが影響し、工期が約3~4年遅れている工区があるのも判明した。建設業界では従来から人手不足であり、加えて2024年4月から時間外労働の上限規制が開始されたことから準備に手が回らないとの懸念があったが、あらためて表出した形だ。さらに追い打ちをかけるかのように、札幌市が2030年冬季五輪の招致を断念している。
2030年度末開業は「極めて困難」
この5月には、鉄道・運輸機構の藤田耕三理事長が国土交通省を訪問し、国交大臣に対して「北海道新幹線新函館北斗~札幌間の2030年度末開業は『極めて困難』」と報告した。新しい開業時期は「数年単位」で延期するとも説明。岩塊が見つかった影響などにより一部工区で遅れがあり、今後、工期短縮策を講じても2030年度末の開業は難しいとした。 報告を受け、さまざまな反応がみられた。北海道の鈴木直道知事は「地元自治体や関係者らが一丸となって進めてきた一大プロジェクトであることを踏まえると、(一部略)われわれ地元関係者にとっては大変遺憾といわざるを得ない」などとコメントを発表。秋元克広札幌市長も「開業が遅れることになれば、まちづくりや民間投資への影響は広範・甚大だ」などと影響を危惧した。 報告を受けて札幌市内で開いた北海道新幹線の整備に関する関係者会議でも、鉄道・運輸機構が工事の遅れと2030年度末の北海道新幹線札幌延伸開業が極めて困難になったと報告。多くのトンネルでは掘削が順調に進んでいるものの、岩塊が見つかった羊蹄トンネルなど「3つの箇所が全体工程のボトルネック」と説明。沿線自治体の首長らも、不安な胸中を明かした。一部首長からは「がっかり」との声もあった。それほど、沿線の市町村で新幹線延伸への期待が高まっていたのだ。