全員がロードレーサーの三兄弟、次兄が事故で下半身不随に。「もう一度バイクに乗せたい」と試行錯誤の末、21年ぶりに鈴鹿で走ることが叶って
「特別」ではなく、あくまでみんなが「普通」になる、と考えるべきだと拓磨さんは言う。 「メガネが必要な人もいれば、補聴器が必要な人、車椅子が必要な人もいる。それをみんながわかっていれば、よりよい社会が開けていくと思います」 イベントを通じて最も印象に残ったのは、ライダーだけでなく、ボランティアの方々も本当に生き生きと活動していたことだ。一つの目標に向けて、それぞれが自分のできることを、楽しみながら精一杯やる。障害の有無は両者を隔てる壁ではまったくなかった。 治親さんは言う。 「健常者だって何かをする時に誰かの手を借りなければいけないことがたくさんある。だから僕らがやっているのは、特別なことではないと思うのです」 お互いがお互いのサイドスタンドとなり、ともに挑戦したり楽しむことが当たり前になったとしたら。それは誰もが生きやすい社会ではないだろうか。 (撮影=木村直軌)
古川美穂