高級コンビニの フォックストロット 、拡大路線を進むなか突然の全店舗閉鎖。元従業員が感じていたある「異変」
2023年末に向けて、高級コンビニエンスストアチェーンのフォックストロット(Foxtrot)は会社の財務について話し合うために社員とミーティングを行った。このミーティングは同社がライバルである食料品店チェーンのドムズキッチン(Dom’s Kitchen)と合併するという発表があった直後に行われたもので、財務状況は暗かった。 2人のミーティング出席者に確認したところによれば、具体的には、幹部財務チームのメンバーがフォックストロットは2023年の売上目標を約3500万ドル(約54億5000万円)下回る見込みであると述べた。同社は当初、2023年の売上高を約1億6500万ドル(約257億7000万円)と予想していたが、最終的には約1億3000万ドル(約202億2000万円)になると見込まれた。 これは、フォックストロット(ドムズキッチンとの合併後、現在はアウトフォックスホスピタリティ[Outfox Hospitality]と呼ばれている)が事業を終了し、イリノイ州、テキサス州、およびワシントンD.C.エリアにあるフォックストロットの33店舗を含む全店舗と、イリノイ州の2カ所のドムズキッチン店舗を閉店すると4月23日火曜日に発表することになった経緯を部分的に説明する1つの統計情報だ。この知らせはスナックスショット(Snaxshot)が最初に公表し、4月23日の朝に行われた全社ミーティングで従業員に伝えられた。 アウトフォックスはソーシャルメディアで声明を発表し、「事業を継続するために多くの道を模索したが、誠意と徹底的な努力にもかかわらず実行可能な選択肢が見つからなかった」と明かした。米モダンリテールは、フォックストロットの共同創業者であるマイク・ラビトラ氏と同社のプレスメールにコメントを求めたが、回答はなかった。アウトフォックスの前CEOのリズ・ウィリアムズ氏と現CEOのロブ・トワイマン氏にもソーシャルメディア上でコメントを求めたが、回答は得られていない。 このニュースは多くのアウトフォックスの従業員にとって衝撃だった。コスト削減の話は絶えず出ていて、数年のあいだに複数回のレイオフが行われてきたが、フォックストロットが廃業の危機にあるという兆候はなかった。アウトフォックスは2月中旬、、食品スーパーチェーンのホールフーズ(Whole Foods)で経験を積んだロブ・トワイマン氏が3月11日付で新CEOに就任する発表を行ったばかりだった。さらに、フォックストロットは経営期間中のほとんどで十分な資本を有しており、株式と借り入れによって約1億8600万ドル(約289億4000万円)の資金を調達していた。 4月23日の午後には、従業員は元従業員となり、退職金は出ないと言われ、呆然とした。ソーシャルメディアでは、従業員がボトルワインやパックサラダを無料で配っているという噂が広まった。 米モダンリテールのインタビューに応じたアウトフォックスの3人の元従業員は、フォックストロットはどうなりたいのかを模索して苦しんでいた会社だという感想を抱いていた。同社は、実店舗とeコマースの売上の適切なバランスを見つけるのに苦労していたという。2015年にフォックストロットが開業したとき、たとえば大手コンビニのセブンイレブン(7-Eleven)と差異化を図れる大きなセールスポイントのひとつだと同社が語っていたのは、たとえばワシントンD.C.ならコーヒーショップのセレモニーコーヒー(Ceremony Coffee)やレストランのリトルセサミ(Little Sesame)のフムスといったように、その店舗を運営する市場で愛されているローカルブランドを扱うようにするということだった。 しかし会社が成長するにしたがい、収益性を高めると同時に店舗間で一貫したエクスペリエンスを提供できるようにするため、ローカルブランドや新興ブランドの優先度が下がり、ナショナルブランドが優先されるようになったと元従業員は語った。たとえば今年のはじめ、同社はコーヒー会社のラコロンブ(La Colombe/フィラデルフィアで創業され、最近乳製品メーカーのチョバーニ[Chobani]に買収された)をカフェサービスに導入した。それまでフォックストロットは、店舗を運営しているエリアのローカルなロースターのコーヒー豆を使用していた。 「会社は本当にさまざまなものになろうとしていて、ひとつの方針を打ち出すのではなく、誰からも好かれようとしていた」と元従業員のひとりは語った。