高級コンビニの フォックストロット 、拡大路線を進むなか突然の全店舗閉鎖。元従業員が感じていたある「異変」
曖昧なビジョン
その結果、フォックストロットは迷走しはじめた。別の元従業員は、ウィリアムズ氏の決定によって「小売業界における権威が剥奪された」と感じ、フォックストロットは「大手小売チェーンのターゲット(Target)でも扱っている食品ベンチャーのマジックスプーン(Magic Spoon)のシリアルをより安く扱う」場所になったという。 それでも、フォックストロットでの議題の多くはビジネス規模の適正化に集中していた。元従業員B氏は、全社ミーティングで「うちは財政的にうまくいっていない」という話が出たと語った。「しかし、破産を申請する兆候はなかった」。 そして2023年11月、フォックストロットは小規模な食料品店チェーンのドムズキッチンと合併すると発表した。ドムズキッチンの首脳陣は経験豊富だ。共同創業者のひとりであるボブ・マリアーノ氏は、食料品店チェーンのラウンディーズ(Roundy’s)でCEOを務めたことがあり、イリノイ州の人気チェーン、マリアーノズ(Mariano’s)の共同創業者でもある。 それでも、合併という位置付けだったため、この契約は不可解だった。2店舗しかないドムズキッチンと比べると、33店舗を展開するフォックストロットは、はるかに大きな企業だ。 別の元従業員によると、合併が発表された直後、フォックストロットは合併のあらゆる利点について社内プレゼンテーションを行ったという。つまり、「互いのビジネスから奪い合うのではなく、力を合わせることで、両方のブランドで買い物をする消費者を共有できる」とのことだったと、元従業員C氏は語った。 より小さなグループでは、幹部はより率直だった。ある従業員は合併が発表された直後、首脳陣のひとりと内密に面談し、フォックストロットの選択肢はドムズと合併するか破産申請するかのどちらかだといわれたと述べた。 従業員へのメッセージでは明確に、現在の焦点はビジネス規模の適正化であると述べていた。そのために、現在はアウトフォックスという名前になったこの会社は、再び新しいCEOを迎え入れた。同社のプレスリリースによると、ホールフーズで数十年働いた食料品店のベテランであるトワイマン氏が3月11日からCEOを務めるとのことだった。 トワイマン氏には、自分のビジョンを実現するための時間があまりなかった。元従業員A氏によると、トワイマン氏は最初の数週間でイリノイ州、テキサス州、およびワシントンD.C.エリアにあるアウトフォックスの全店舗を訪問し、どうしたらアウトフォックスは注文処理を改善できるかについて多くの質問をしたという。 4月22日月曜日、アウトフォックスが永久に閉店するというニュースを知らされたとき、従業員、特に店舗で働く従業員は呆然とした。あるフォックストロットの店舗で働いていた2人の元従業員は、カフェエリアにまだ残っている人たちは会社が廃業したことを知っているのだろうかと思いながら、シットコムシリーズ「ラリーのミッドライフ★クライシス(Curb Your Enthusiasm)」の曲に合わせてTikTokを撮影した。 「フォックストロットとドムズで働いていた人にとっては、情熱をかけたフルタイムのプロジェクトだった」と元従業員B氏は語った。「簡単で単調な小売や販売の仕事だったら、誰もこの仕事に就いていない」。元従業員B氏はこう付け加えた。「数人の経営幹部による稚拙な判断によって、何百人もの従業員がひどい目にあった。ほんとうに腹が立つ」。 [原文:What went wrong at Foxtrot] Anna Hensel(翻訳:ジェスコーポレーション、編集:戸田美子)
編集部