緑茶市場の停滞、“ゴクゴク飲める”に振り切りすぎた? お茶の価値を再定義する試金石となるか…『新・伊右衛門』の覚悟
2004年の発売以降、ペットボトル緑茶として長く親しまれ、今年20周年のメモリアルイヤーを迎えるサントリー『伊右衛門』。ところが2023年、ペットボトル緑茶のNB商品全体が落ち込む中、『伊右衛門』も過去最低の売上を記録。巻き返しを図るべくサントリーは、3月12日に”史上最高レベルの濃さ”を誇る新しい『伊右衛門』を発売した。これまでのイメージを刷新する今回のリニューアルにかけた思い、商品開発のプロセス、緑茶市場の今後の展望について担当者に聞いた。 【写真】緑茶カラーの衣装で登場、伊右衛門の新CMに出演する堺雅人、古川琴音
■『伊右衛門』筆頭に大手NB緑茶が総崩れ、原因は緑茶としての価値の希薄化?
2023年、サントリー『伊右衛門』が過去最低の売上を記録。同じくペットボトル緑茶の『おーいお茶』(伊藤園)、『生茶』(キリンビバレッジ)、『綾鷹』(日本コカ・コーラ)も軒並み売上を落としている。緑茶市場全体としては落ちていないものの、消費者がより安価なPB(プライベートブランド)商品へと流れ、NB(ナショナルブランド)が押された形となっている。 「これは自分たちの努力不足です。少なくとも『伊右衛門』においては、商品の価格に見合う価値をお客様に提供できていなかった。それが去年の結果であり、そこを工夫しなきゃいけないと危機感を持ちました」 2004年の発売以来、何度もリニューアルを敢行してきた『伊右衛門』。近年では、2020年に、”ゴクゴク飲める清涼飲料”としての要素を打ち出し、一旦は売上を伸ばしている。しかし三宅さんは「これが大きな反省点だった」と振り返る。 「昨今、亜熱帯化が進み、人々の水分摂取量が上がる中、お客様の『ごくごく飲めるものを飲みたい』というニーズから、麦茶や水がすごく伸びてきました。そこで『伊右衛門』も”水分補給としての緑茶”というニーズにかなり合わせたんですね。緑茶らしさを残しながらもゴクゴク飲める中身に仕上げた結果、一旦は伸びましたが、結果として『それなら麦茶でも水でもいいよね。わざわざ緑茶を飲む価値って何なの?』という命題にもぶち当たりました。つまり飲料全体のトレンドを見すぎて緑茶を動かしすぎてしまい、結果、緑茶としての価値が希薄化してしまった……それが去年までの状況です」