江戸前寿司でサーモンは邪道? 寿司職人が「海外SUSHIブーム」に思うこと
寿司職人の小川洋利さんは、日本のすし文化を全世界に広めるため、世界50カ国以上にわたって、すし指導員として外国人シェフに調理指導をされています。本稿では、カリフォルニアロールやサーモンが世界で根強い人気を誇る理由について、小川さんが解説します。 【写真】イギリス人が感激した"日本人の服の畳み方" ※本稿は、小川洋利著『寿司サムライが行く! トップ寿司職人が世界を回り歩いて見てきた』(キーステージ21)より、内容を一部抜粋・編集したものです。
カリフォルニアロール誕生と人気であり続ける理由
日本でもなじみになってきたカリフォルニアロール。伝統的な日本のお寿司とはまた違ったおいしさがありますね。 カリフォルニアロールは、カリフォルニアのお店が発祥と言われていますが、実際には、太平洋戦争のあとにカリフォルニアに移住した日本人たちが、お祭りのときやパーティーのときに「寿司を作ろうよ」と言って作ったのが始まりとされています。 当時はまだキュウリがなかったから、キュウリのかわりにアボカドを使いました。お米も日本のようなお米がなくて、どちらかというとパサパサなお米でした。アメリカでは白いお米を食べる習慣がなく、必ず味つけをして食べます。 そこに、飛び子、ゴマなどで味つけして、生魚のかわりによく食べられるエビやカニを入れました。当時のアメリカでは、生魚を食べる習慣がなかったからですね。なおかつ、海苔は黒くて見た目が悪いから、中に巻いて隠したのです。俗にいう裏巻きです。 寿司もそうですが、世界に広まっていくのに、日本から広まることはまずありません。アメリカが最初に始めて、流行ったものが後から世界に広まることが多いのです。 カリフォルニアロールはなぜこんなに人気があるのでしょうか? 外国人は生魚を食べる習慣はないが、エビ、カニは世界共通で、どこの国に行ってもあります。あとは巻物なので食べやすいという理由もあります。アボカドも、比較的どこの国へ行ってもあり、最近は日本でも食べられます。この組み合わせがどんどん広まって、だんだん進化してきています。 それから、白いご飯を食べる習慣がない人は、ご飯をつぶすことによってパン感覚で食べることができます。アフリカだと、ご飯をつぶしてサンドイッチ状にして食べたりします。タイではカオニャオというもち米を食べます。 カリフォルニアロールは巻物で、手で食べることができるので、そういうところで世界中の人が気軽に食べられるのかなと思います。国によっては歩きながら食べる人たちもいるんですよ。テイクアウト感覚、ハンバーガー感覚で。 もともと日本でも江戸前寿司は屋台で売られ、ファストフード感覚のものだったので、海外でも同じ感覚でカリフォルニアロールが広まったのでしょう。手軽に食べられるし、世界共通の食材が入っていて、パン食の国でもサンドイッチ感覚で食べられます。 いろいろなソースをつけて食べられるのも人気の理由かもしれません。日本では寿司は、生の食材のうまみを味わうという文化がありますが、海外ではクリームチーズなど、自国の食材を入れてアレンジしたり、好きなものを入れたりします。国によってはチョコレートやイチゴを入れてデザート感覚で食べるところもあります。