「CNCフライス盤」中韓の牙城崩す…トヨタ技術者が積み重ねる対策
技能五輪国際大会/トヨタ自動車・平松遼馬選手
世界の若き匠が持ち前の技能を競う第47回技能五輪国際大会が9月10日―15日にフランスのリヨンで開かれる。隔年開催だが前回はコロナ禍の影響で15カ国の分散開催だった。久々に1国に技能者が集う大会へ「モノづくりニッポン」代表で臨む主な選手を紹介する。 「技能五輪国際大会(フランス・リヨン)」とは? トヨタ自動車にとってCNC(コンピューター数値制御)フライス盤の職種で国際大会に出場するのは2017年以来3大会ぶりとなる。日本勢としても直近5大会は金メダルから遠ざかっており、苦戦を強いられている種目。強さを発揮しているのは中国や韓国だ。この牙城を崩そうと努力する平松遼馬選手への期待は大きい。 CNCフライス盤は、100点満点を取るのが難しい職種。現在、4連覇中の中国でも平均点が90点程度であり、平松選手は「いかに点数を下げないかが勝負のポイント」と話す。 大会が目前に迫る中で着実な点数の獲得に向け日々の訓練にも熱が入る。「簡単な題こそ、しっかり得点を拾い切ることが課題。手順などを自分のモノにする」(平松選手)ために反復練習をしながら、調整を進めている。エキスパートでトヨタ技能者養成所技能五輪課の剣持光彰さんも「大会までの短期間で何か技術的に大きく向上することは難しい。現在の最大限の力を着実に発揮できるようにすることに重点を置く」と指導方針を語る。 国際大会で想定されるのは機械の故障や必要な道具・部品の欠如などのトラブルだが、平松選手は「日頃から初めて見る課題に挑戦している」と対策を積み重ねている。「平松選手は考える力が強み。何かを取りかかる前に計画を立て、効率よく課題を進められる」と評価するのは剣持エキスパートだ。一方で「まずは考え過ぎず取り組むことも大事」と状況に応じた対応を提案する。 同職種は国内大会と国際大会で内容が異なる。国内大会では汎用のフライス盤だが、国際大会はCNCによる加工だ。「共通する技能もあるが競技としては別物」(平松選手)であり、海外選手はCNCの技術を4―6年間学んでいるという。 また、国内大会は事前に課題が公開されるが、国際大会は当日に図面を手渡され、加工方法などをその場で一人で考えなければならないなどハードルは低くない。だが平松選手は「1番の目標は金メダルを取ること。最後まで諦めず取り組みたい」と感情を表に出さず淡々としている印象だが、静かに闘志を燃やす。 平松選手が目指すのは「こいつに任せておけば大丈夫」と言われる技術者。大きな目標に向け、大事な通過点である国際大会で全力をぶつける。(名古屋・川口拓洋) 【CNCフライス盤】 1枚の図面を渡され、約15分間でどう作るのかを思考する。コンピューター利用設計(CAD)で形状をモデリングした後、機械で加工するためにコンピューター利用製造(CAM)によるプログラミングづくりを行い加工に入る。加工後に寸法を計測し、規定に近づける。課題は約4時間、約6時間、約7時間の3種類あり、材質や形状、加工要素が異なる。短時間でモデリングや加工方法を考え、実行できるか。経験が勝負のカギを握る。