50代ひとり暮らし女性、断捨離のつもりが気分が上がって…タンスの肥やしで夜な夜なファッションショー
総務省統計局が発表した「令和2年国勢調査」によると、年齢10歳階級別に2005年以降の「単独世帯」割合について、65歳以上では増加傾向にあるとのこと。男女ともにひとり暮らしの高齢化が進む中で、ひとりで生きていくための準備をしている方も多いのではないでしょうか。時間を自由気ままに使えるのがおひとり様のいいところ。思いつきに、いつしか夢中になって――。川原田七穂実さん(福岡県・無職・56歳)は、着なくなった服を整理しようとしたところ、思わぬ楽しみを見つけたそうで―― 【漫画版はこちら】 * * * * * * * ◆引っ越しを機に服の山に向き合ったものの 深夜0時、ひとりだけのショーが開幕。ひと冬だけ続いた、私のささやかな愉しみは、ちょっとした思いつきから始まりました。 引っ越しのため、もう着ないであろう服を20着ほど処分しようと思ったのです。ただ捨てるのは忍びなく、クリーニングした服を箱の中に入れて、「ご自由にお持ちください」と自宅の玄関先に置いてみることに。 30分ほど経った頃でしょうか。何だか手放したくないという気持ちがムクムクと湧き上がり、やっぱり回収しようと外に出ました。しかし、すでに箱ごと誰かに持ち去られていたのです。 手放そうと決めたのは自分だとわかっていても、胸が痛み落ち込みました。喜びも悲しみもともにした服を、どうして簡単に捨ててしまったのだろうか……。 諦めきれず、後日古着屋さんをのぞくも、当然私の思い出の服は見つかるはずもなく、自分の判断を後悔するばかり。結局、ほかの服は処分せず、そのまま引っ越し先に運びました。 しかし、荷詰めはもとより、荷ほどきをするのも一苦労。服が多すぎると思った私は、やはり処分しようと思い直したのです。
手始めにタンスの引き出しを開けて、中身を全部床に広げました。色褪せたTシャツや、年齢的に着るのは無理な気がするミニスカートなどを手放すことに。作業を続けていると、ふと思いつきました。「このままただ捨てるのはもったいない。最後に着おさめしてからにしよう」。我ながら、素晴らしいアイデアです。 昼間、頻繁に着替えると急な来客に対応しかねるので、深夜に行うことに決めました。時間も自分で好きなように決められるのがひとり暮らしのいいところ。ウキウキした気持ちで夜を待ちました。 リビングにある、全身が映る三面鏡の前がステージです。まず、パステルカラーやビビッドカラーの服ばかりを集めてみました。幼い頃から可愛い色が似合わないのに、なぜこの服を買ったのだろう? バーゲンで、その場の勢いにのまれた記憶がよみがえり、ちょっと悔しくなります。そのお金で友人とランチしたほうがずっとよかった……。 気持ちを切り替え、どうにか着こなせるものはないかと探すことにしました。差し色に使う程度ならなんとかなりそうだと、鏡の前でくるくる回り、決めポーズ。つい気分が上がって、メイクもしたくなってきました。 おでかけメイクにしようと、ふだんは描かない眉に四苦八苦しながらどうにか完成。改めて全身をチェックすると悪くない。私も着飾ればまだまだ素敵! そのうち完全に「捨てる」という目的を見失い、ファッションショーに夢中になってしまいました。鏡をのぞいては、「結構いい感じ」「案外素敵」。 それだけでは飽き足らず、「君は薔薇より美しい」のCDをエンドレスでかけ、ショーは続きます。照明を控えめにして、アロマキャンドルを灯すと気分は大盛り上がり! いつのまにか夜明けを迎えていました。 こんなことをしていたので、洋服は少ししか減らせませんでした。
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