「田舎でのびのび育児。夢見た私がバカだった…!」都心から移住した夫婦が「田舎懲り懲り」と泣き出した、地方育児の厳しすぎる現実。
文部科学省の調査によると、2017年から2021年までの5年間に、全国の小中学校の統合は合計714件行われたという。少子化に歯止めがかからないだけでなく、教員の働き方問題、高齢化に伴う地域社会の弱体化など、子供たちの教育環境にはさまざまな社会問題が影響を与えている。 危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は子どもの教育環境についてこう話す。 「現在、小学校の学級編成は1年生から3年生までが35人、4年生から6年生は40人を上限人数としています。1クラスあたりの人数が減ることで、きめ細やかな授業や教員の負担減などの効果が期待されるところですが、その基準を下回る少規模校では、大規模クラスにはないさまざまな問題があるようです。マイホームを買う際などには、お子さんをどのような学校に通わせたいかもよく検討してから立地を決めることをおすすめします」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 「息子が保育園の年中さんの時に、今の住所に引っ越してきました。私たちが住んでいるのは、そこに昔から住んでいる人や農家さんが多い市街化調整区域ではあるのですが、土地を手放したい人が増えていて、外部からもちょくちょく子育て世帯が土地を買うようになっています。土地はやはり圧倒的に安いんじゃないでしょうか」 こう話すのはフリーランスでWeb制作などを手がける個人事業主の斉木まりあさん(仮名)。会社員の夫と小学校3年生の男児との3人暮らしだという。 「私も夫も田舎育ちなせいか、街なかで暮らしていた時は、小さな息子を安心して外で遊ばせられない環境が不満でした。それで、そこから車で30分もかからない田園地帯で空き家仲介のような取り組みをしていることを知り、味のある昔のお家を安く買ってリノベしたんです」
田舎で育った夫婦は、周辺が農家ばかりの環境に違和感もなく、のどかな環境で子どもを育てられるようになったことをことのほか喜んだという。 「でも、自分たちが田舎に住んでいたのは全く別の土地。当然ですが、今住んでいる場所は知り合いもいなくて、よそ者に対してちょっと冷たい感じ。思いがけず地域に慣れるのが大変でした」 しかし、そのことよりもまりあさんがショックを受けたのが、少人数で受ける教育が予想外に自分の子に合っていなかったことだという。息子は地域の保育園に入園させたが、所属した年中クラスは全員で10人に満たなかったそう。 「たった7人でした、この地域唯一の保育園なのに……。そしてほぼそのままのメンツで小学校に入学です。近所のおばあさんたちは、『ここの子たちは恵まれてる』『先生たちに手厚く見てもらえて最高』としきりに言います。実は、私もそれを期待して田舎暮らしを決めたんです。でも実際経験してみて、初めて現実を知りました」 田舎ののどかな暮らしを期待していたまりあさん一家。後編では、そんな理想に突き付けられた「田舎子育ての現実」を聞くことができた。後編に続く TEXT:中小林亜紀