突然起きる「脳卒中」 予防はできる?できない?
この記事では、今知っておきたい健康や医療の知識をQ&A形式で紹介します。ぜひ今日からのセルフケアにお役立てください! 【関連画像】脳卒中は、要介護状態をもたらす最大の原因 ●「脳卒中」に関する問題 【問題】脳の血管が詰まったり、破れたりして、脳の神経細胞が深刻なダメージを受ける「脳卒中」。その説明として間違っているものは次のうちどれでしょう。 (1)脳卒中は全世界で25歳以上の成人の4人に1人が経験する (2)脳卒中の日本における死亡率は減少傾向にある (3)脳卒中は日本人の要介護状態をもたらす最大の原因といえる (4)脳卒中は突然起こる病気であり予防はまず不可能だ
正解(間違った説明)は、(4)脳卒中は突然起こる病気であり予防はまず不可能だ です。脳卒中は生活習慣を改善したり、受けておくべき検査を受けることで、8割が予防できる病気とも言われています。 ●死亡率が下がっても喜べない理由 ある日突然、脳の血管が詰まったり、破れたりする「脳卒中」。治療が遅れると脳の機能に異変を来し、手足の麻痺や言葉の障害が残ることもあります。「突然倒れて、そのまま亡くなってしまった」「命は助かったが後遺症が残って社会復帰ができなくなった」など、脳卒中の怖さについては皆さんも耳にしたことがあるでしょう。脳卒中は全世界で25歳以上の成人の4人に1人が経験するとされるほど多く、決して珍しくない病気です(*1)。 一昔前まで、脳卒中は国民病とも呼ばれ、日本人の死因第1位に君臨していました。ところが現在では、脳卒中の死亡率は大幅に減少し、がんや心臓病、老衰に次ぐ第4位まで順位を落としています(下図)。一番の要因は、何と言っても治療技術の進歩です。脳卒中を引き起こす高血圧などの予防のために、啓発活動に取り組んできた医療関係者の努力も大きいでしょう。 しかし、脳卒中の死亡率が減少したことを、単純に喜ぶわけにはいきません。東京女子医科大学附属足立医療センター脳神経外科教授・診療部長の久保田有一氏は、「亡くなる人が減ったのは確かですが、診療していて、脳卒中の患者さん自体がものすごく減ったという印象はありません。脳卒中を起こしても命が助かる人が増えた、ということだと考えられます」と話します。 救える命が増えたのは朗報ですが、問題は後遺症です。脳卒中を発症した人のうち、社会復帰できる人は半数程度にとどまるそうです。後遺症が残って社会復帰が難しい人、寝たきりになる人が少なくないのです。 介護が必要になる原因のうち最も多いのは認知症で、脳卒中は二番手です。ただし、認知症の中には脳卒中の後遺症として起こる「脳血管性認知症」が2~3割程度含まれます。それも合わせると、脳卒中は要介護状態をもたらす最大の原因となります(下図)。 「2018年に『脳卒中・循環器病対策基本法(*2)』という法律が成立しましたが、その背景にあるのが、医療費が日本経済を圧迫しているという現状です。脳卒中を予防して寝たきりの人を減らすために、国も本腰を入れて対策に取り組もうとしているわけです」(久保田氏)