突然起きる「脳卒中」 予防はできる?できない?
老いも若きも、誰でも脳卒中を起こす可能性がある
脳卒中には、脳の血管が詰まる「脳梗塞」と、血管が破れる「脳出血」、動脈にできたコブが破裂する「くも膜下出血」などがあります。共通点は、どれも血管が破綻して発症すること、そして脳の機能が損なわれてしまうことです。 血管は加齢により衰えていきます。また、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病も血管の劣化を進めるため、脳卒中は、「メタボ(メタボリックシンドローム)の中高年の病気」と思うかもしれません。しかし、実際はそうとは限りません。 久保田氏は、「脳卒中は60代くらいから急増しますが、若い人が発症することもまれではありません」と話します。20代、30代の若さでくも膜下出血を起こす人もいれば、血圧が高いわけではないのに脳梗塞を起こす人もいます。脳卒中は、突然死や寝たきりのもとになる病気であると同時に、誰がなってもおかしくない病気でもあるのです。 では、脳卒中の予防は果たして可能なのでしょうか? 「脳卒中は突然起こる病気でありながら、実は8割が予防できる病気でもあると言われています。日常生活で気をつけるべき予防のポイントや、受けておくべき検査があるので、ぜひ皆さんに知ってほしいです」(久保田氏) 久保田氏によると、脳卒中を起こさずに済むかどうかを左右する最大のポイントは、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病を予防、改善できるかどうかです。 「生活習慣病の改善と併せて、肥満対策のために運動することや、節酒も大事です。そして絶対にやめていただきたいのが喫煙です。プラスαで、よく笑うこと、ストレスを解消することもお勧めします」(久保田氏) このほか、血圧が高くない人でも、「心房細動」という不整脈を持っていると脳梗塞につながることがあります。 「心房細動を起こすと、心房の中でよどんだ血液が固まって血栓になり、流された先の脳動脈で詰まることがあります。心房細動からくる脳梗塞は高血圧などの生活習慣病がない、アスリートのような元気な人でも起こすので、血圧が低い人も、『脳卒中にはならないだろう』と考えてはなりません」(久保田氏) 脳卒中を発症するかどうかは、予防への取り組み次第で大きく変わります。さらに、脳卒中を起こしても命が助かるかどうか、軽症で済んで社会復帰できるか、後遺症のために寝たきりになるか、再発を防げるかどうか…このような「分かれ道」がいくつもあります。それぞれの岐路であなたや周囲の人たちがどう対応するかで、その後の生活が180度違ってくるのです。一度進むと後戻りできない道だからこそ、より適切な道を選ぶ知恵を備えておきたいものです。 *1 Roth GA, et al. N Engl J Med. 2018; 379(25): 2429-2437. *2 正式名称は「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」 (図版制作:増田真一)