ADHDであることを、本人や学校にどのように伝えるか? 「あなたが悪いからではない」と伝えることの大切さ
困った行動はなぜ? 誰に相談する? 治療すればよくなる? この先どうなる? イラスト図解で基礎からわかるADHD入門書『ADHDがわかる本 正しく理解するための入門書』より、連載形式でADHDの「今」をご紹介します。 ADHDの子どものために、学校側ができること 今回は、ADHDの子ども本人や学校などへの伝え方について解説。
本人・学校への伝え方とタイミング
本人や学校などに、ADHDであることを、いつどのように伝えるかは、難しい問題です。年齢や子どもの性格、症状、園や学校の支援態勢などによって、臨機応変な対応が求められます。 ADHDの子どもは、特性ゆえの行動から叱責されることが多く、「自分はダメな子だ」と、自信をなくしがちです。そのため、本人にADHDについて伝えることは、自尊心を守るという大切な意味があります。みんなと同じようにできないのは、ADHDとい う特性のためとわかれば、むやみに自信を失わずにすむでしょう。 ただ、診断名や治療法などをきちんと理解できるのは、小学校高学年以降でしょう。小学校低学年までは「ほかの子どもよりも忘れやすい、じっとしていられない性質がある」という事実を、わかりやすく伝えてあげてください。 ■本人に伝える3つのポイント 本人の自尊心を傷つけないように、ことばを選びましょう。ただし、まどろっこしくならないように、わかりやすく端的に伝えることも大切です。 (1)「あなたが悪いからではないのよ」 失敗することがあっても、本人が「悪い子、ダメな子」ではないことを伝える (2)「“じっとしていることが苦手”な性質があるみたいだね」 ほかの子どもに比べて「落ち着いていられない、忘れっぽい」などの性質があると伝える (3)「薬をのんで気をつければ、みんなと同じように行動できるよ」 薬をのんで、対処法を身につけることで、みんなと同じように行動できるようになることを伝える
学校や周囲の人にも特性を理解してもらう
では、園や学校には、子どものADHDについて伝えておくべきでしょうか。子どもの特性から“ほかの子どもと違う”ことは、いずれ明らかになります。また、子どもがあらぬ誤解を受けて、つらい目にあわないとも限りません。 基本的には、ADHDであることを伝えておくのがよいでしょう。正しく理解してもらうためには、下記の4つのポイントを押さえて伝えるようにしてください。早く伝えなければと、焦ることはありません。担任の先生にはタイミングを見計らって伝えればよいでしょう。また、子どもの意見を聞いておくことも大切です。 学校には、ADHDのような特性のある子どもに対して合理的配慮をおこなうことが文部科学省より求められています。園や学校と信頼関係を築き、できるだけ子どもの望む方向へ進めていきましょう。 ■園や学校に伝える4つのポイント ・ADHDは脳の機能の偏りで起こる発達障害のひとつで、子どもの3~7%にみられる ・本人に悪意があったり、怠けたりすることが原因ではない ・しつけが原因で起こる障害ではない ・ADHDの子どもが園や学校で集団行動を送るためには、周囲の人の理解と協力が必要 ■理解・受け入れのために先生に協力してもらう ・先生からクラスメートへ 「障害」という言葉は使わず、頑張ってもできない子がいることを伝える。「○○さんは、頑張ってやろうとしても、じっと座っていることが苦手だったり、咄嗟に行動したりしてしまうことがあるからサポートしてあげようね」など。 ・同級生の保護者へ クラスの中に特別な配慮が必要な子どもがいること、そして障害も個性のひとつとして受け入れていくことが、すべての子どもの心の成長につながることを理解してもらう。