[特集/フリック・バルサ徹底分析 02]カンテラの質こそがバルサの強み 躍動するヤング・バルサ14人
F・ロペスは決定力がある マルティンは左利きの大型DF
パリ五輪で5得点2アシストを記録したフェルミン・ロペスもカンテラ出身者だ。2022-23はローン先のリナーレス(3部相当)でプレイしたが、ここで12得点4アシストと結果を残し、翌年にローンバックとなり23-24はバルサのトップチームでプレイした。 筋肉系の負傷があり今季はここまで2試合先発、5試合途中出場となかなかピッチに立てていないが、第11節レアル・マドリードとのクラシコで先発に選ばれ、トップ下で45分間プレイした。プレイエリアが広く、ボールを失わないキープ力があってドリブルでボールを運べるタイプで、“個”の力でなんとかできる。攻撃性能に優れているので、今後どんどんプレイ時間が長くなっていくかもしれない。 なにより、その決定力の高さはパリ五輪を通じて日本のファンも良く知っている。準々決勝の日本×スペインは0-3という結果に終わったが、F・ロペスはこの試合で2得点している。左足での強烈なミドルで1点、右足アウトサイドによるミドルで1点という、日本としては防ぎようがない呆気に取られる2ゴールだった。 カンテラ出身ではないが、今季すでに3試合先発、2試合途中出場で3得点しているパブロ・トーレも21歳だ。相手が嫌がるポジション取り、ギャップを突くのがうまく、先発した3試合はいずれもインサイドハーフを務めた。小刻みにボールタッチするため相手は飛び込みにくく、狭いスペースをドリブルで突破できる。 トーレは右足、左足を遜色なく使える器用さがあり、フィニッシュの精度が高く短いプレイ時間でも答え(=得点)を出せる。10節セビージャ戦では75分から出場し、ジュール・クンデからのクロスに右足で合わせて1点、左サイドから蹴ったFKがファーサイドに流れてそのままゴールになって1点と、15分間のプレイで2得点している。 このトーレは2022-23にバルサBに加入し、昨季はジローナにローンされていた。同じようにバルサのカンテラ出身ではないが、バルサBからスタートしたジェラール・マルティンも3試合先発、6試合途中出場と頭角を現わしている。 身長186センチのマルティンは貴重な左利きの大型ディフェンダーで、今季は左サイドバックを務めることが多い。バルデと交代で入ることがあれば、先発することもある。バルデほど攻撃参加はしないが、そのぶん守備での安定感がある。懐の深いボールキープ、冷静な判断、正確なフィードなど、どのプレイも落ち着いている。 いまのバルサはとにかく攻撃的で、左サイドバックのポジションではバルデの存在が際立っている。しかし、守備を考えるならマルティンの高さ、強さ、落ち着きのほうが安心できる。バルデとマルティン。ポジションを争う両者がどちらもU-22という事実が、バルサが育成王国であることを示している。 これらの選手の他にも、ブライトンから復帰したアンス・ファティ(22)、エクトル・フォルト(18)、セルジ・ドミンゲス(19)、パウ・ビクトル(22)などがピッチに立ち、それぞれ存在をアピールしている。ファティ、フォルト、ドミンゲスはいずれもバルサのカンテラで育ち。ビクトルはジローナのカンテラ育ちだが、バルサBを経由してステップアップしてきた選手だ。 こうして見ていくと、今季のバルサは若い選手たちが引っ張っていることがわかる。しかも、技術力が高い生え抜きの選手が多く、阿吽の呼吸でプレイできている。好守両面で各選手が連動するとはどういうことなのか、いまのバルサを見るとよく理解することができる。 文/飯塚健司 ※ザ・ワールド2024年12月号、11月15日配信の記事より転載
構成/ザ・ワールド編集部