業界のトップランナーを取材!CyberZが取り組む「女性活躍推進プログラム」について聞いてみた
スマートフォン広告代理事業を軸として2009年に創業したCyberZ(サイバーゼット)は、eスポーツ大会「RAGE」のプロデュースや、フィギュアブランド「SHIBUYA SCRAMBLE FIGURE」なども手掛け、多岐にわたる事業展開で成長を続けている。そんななか、経営戦略として“DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)の推進”が重要な使命だと考える同社は、公平で受容性に富んだ環境作りを目的に、2021年よりCDO(Chief Diversity Officer)を設置し、さまざまな取り組みを実施中だ。そこで今回は、新CDOに就任した同社広告代理事業部クリエイティブ局の局長、岩上友香さんを直撃。CyberZが推進する「女性活躍推進プログラム」などについて詳しく聞いてきた。 【写真】女性活躍推進プログラムに取り組む新CDOの岩上友香さん ――まず、CDOについて、具体的な業務内容や役割を教えてください。 【岩上友香さん】CDO(Chief Diversity Officer)という名の通り、組織におけるダイバーシティを推進する役割を担っています。CyberZではCDO室というもの設置しており、メンバーを巻き込むことで現場の声を吸い上げながらダイバーシティ推進に向けたさまざまな施策を実施しています。私自身は新責任者としてそこの運営に携わっており、組織全体の課題を抽出してメンバーに落とすことでクリティカルな施策ができるように動いています。 ――CyberZのダイバーシティ推進に関して、特に力を入れているのは何ですか? 【岩上友香さん】現時点では「女性活躍推進」にもっとも力を入れて取り組んでいて、今期は女性管理職比率というのを30%まで引き上げることを目標に掲げて活動しています。女性管理職・リーダー輩出を進めるにあたり、どのようなライフステージの女性でも長く働きやすい環境を整えることと、採用においても入社したいと思える魅力的な会社を作り、女性社員比率そのものを引き上げていくことも意識しています。 ――他社との差別化ポイントとして、CyberZのダイバーシティ推進でユニークだと思う点を教えてください。 【岩上友香さん】ユニークかどうかはわかりませんが、“働きやすい環境”というところから、社員同士の交流の場を多く設けている点は特徴の1つだと考えています。制度や体制を整えることはもちろん大切ですが、悩んだときに気軽に相談できるとか、困ったときに頼れる人間関係があるということも同じくらい大切だと思っているので、ヨガやピラティスなどの部活があったり、パパ社員同士・ママ社員同士のランチ会も不定期で開催したりと、社員が集まり交流する場を意識的に作っています。部活動は仕事が終わった後に1時間程度で行ったり、ママが多いものに関しては始業前に集合して実施したり、参加者や内容に応じて柔軟に動いています。私も以前、料理部というものに入っていて、普段関わりのない部署の方々とそこで関わっていたのですが、それこそ年齢もかなり離れていたのに“共通のワークをやっている”というところから自然に会話ができて良さを実感していました。 ――なるほど。そうした交流の場からまた新しいアイデアなどが出てきそうですよね。では、ダイバーシティを推進するなかで、これまで直面したもっとも大きな障壁は? 【岩上友香さん】私が所属するのは広告代理事業なので、私たちは日々、お客さま第一で動くところがあって、残業があったり、会食が重なってしまうタイミングもゼロではないんですが、その文化と“女性が働きやすい環境”というもののギャップを大きな障壁として感じていました。私自身、元々は営業職だったこともあり、女性であり、ママ社員であり時間的な制約がある中でそのギャップを埋めるのは当初難しいなと実感していました。 多様性のある働き方が認められる環境を作る意味で、事例をつくることも大切だと思い、私自身が意識してきたこととしては、時間ではなくて質で評価されるような働き方をすることです。例えば、弊社は始業時間が10時からですが、それを8時始業に早めさせてもらい、みんなが動き出す前に集中系のタスクをこなしたり、子どものお迎えの時間はミーティングを避けてもらうよう率直に伝えてメンバーにも協力してもらったりすることで、 “柔軟な働き方”とそれに対する周囲の理解が根付いて広がってきているなという感覚があります。コロナ禍も経てリモートワークやオンライン会議が定着したこともあり、数年前に比べると、かなり働きやすさのようなところは改善されてきているなと思います。 ――ダイバーシティ推進が、御社の企業文化や業績に与えた具体的な成果について、実例を挙げてお話しいただけますか? 【岩上友香さん】採用にはいい影響が出ているかなと思っています。自分も新卒採用に数年間関わってきていますが、「CyberZ=女性活躍」とか、「女性が生き生きと働ける会社」というイメージを持っていただけていることを、学生や内定者から聞くことが増えました。これまでは会社のイメージとして創業時のイメージからなのか「体育会系ですよね」と言われることが多かったんですけど(笑)、CDOの活動を始めてからは「女性」とか「家庭」という言葉、イメージをよく聞くようになったので、そこは大きく変わってきているかなと思います。 ――ダイバーシティ推進の領域で、新たに挑戦したいと考えている領域や課題は? 【岩上友香さん】会社としては2020年から女性活躍推進に取り組み、女性に対して「スキルアップをしましょう」とか、「女性管理職へのイメージを変えていきましょう」というのをやってきたんですが、女性にフォーカスするだけでなく、「会社全体の働きやすさを改善した結果、女性も働きやすくなった」という順番で、組織の根本課題も解決していきたいと考えています。女性活躍推進に力を入れているとは言っても、CyberZのマネージャーはまだ男性の方が比率として多いのが現状なので、女性の育成に関わるのが男性というパターンも多々あります。そのため、育成をおこなう側の男性へのフォローも大切になってきます。マネージャー研修では、時代に合わせた“多様性の観点”の内容を入れるなど、研修内容の見直しも進めています。 ――CyberZが理想とする未来の組織像や、ダイバーシティの在り方について教えてください。 【岩上友香さん】“誰もが自分らしく働ける”というのを実現することで、結果的に女性活躍が実現するというのが理想の形だと思っています。現状は女性管理職比率を上げていくことに注力して対策はしていきますが、あくまでも理想は男性も女性も関係なく、誰でも多様な働き方が認められる…という環境だと思っていますので、段階を踏んで理想に近づいていきたいと考えています。 ――続いて、岩上さま個人に関する質問になるのですが、子育てをしながらキャリアを築くうえで、岩上さまならではの工夫や仕事術、また、同じような立場の方へのアドバイスがあれば教えてください。 【岩上友香さん】私が一番意識しているのが“とことん周りを頼る”ということです。家族には「助けてほしい」と率直に伝えますし、チームのメンバーにもどんどん仕事を任せています。上司に対しては、割と遠慮がちになってしまう性格ではあるんですけど、この役職についてからは自分の思いや考えをちゃんと共有するようにしていて、必要なときは上司を頼るということもやっています。 でも、頼ってばかりだとダメなので(笑)、自分に余裕がある時、返せるタイミングでは“全力で返す”というところは、とても意識しています。うまく周りを頼れる人ばかりではないので、「困っている人がいるな」と思った時には、役職に関わらず何か自分にできることはないか探して、こちらから声をかけるようにしています。アドバイスできるほどのことではないんですが、頼れる時にはとことん頼って、返せる時には全力で返そう…という意識は真似してみてもらえるといいかもしれません。 ――子育てとキャリアの両立を実現するために、会社のサポートや制度が役立っていると感じる点は? 【岩上友香さん】私が一番役立っているなと思うのは、“キッズ在宅”という制度で、子どもの体調が悪い時は子供を自宅で看ながらリモートワークができる制度です。この制度はリモートワーク浸透のきっかけとなったコロナ禍よりもだいぶ前からある制度で、以前より社内に浸透しているおかげで、子供の体調不良を理由に仕事を休まずに済みますし、「あ、今日はキッズ在宅なんだ」と、周りも理解してくれて温かい目で見てくれる方も多いので助かっています。制度として存在しているたけでなく、しっかり活用されていて理解も浸透しているという理想の状態だと思います。また、CyberZ独自の制度である「キッズホリデイ」という制度も、子どもの誕生日が特別休暇になり、プレゼントももらえるというものですが、とても家族に喜ばれ、応援されるような制度もあります。 ――ご自身が体験されている「ダイバーシティ」を、家庭や子育ての中でどのように実践されていますか? 【岩上友香さん】 家庭内でも性別の差で役割を決めることはしないようにしています。例えば、ご飯をつくるのはママとか、子どもが熱を出して呼ばれたらママが行くといったような、世間一般ではまだ薄く残っているイメージみたいなものを家庭内には持ち込まないようにしていて、お互いの仕事の状況を見ながらフォローし合う形で偏りがないように柔軟に分担しています。 ――ダイバーシティ推進に関心のあるほかの企業や個人に向けて、どのような一歩を踏み出すべきかアドバイスをお願いします。 【岩上友香さん】アドバイスというとおこがましいのですが、数字の目標に囚われ過ぎず、本質的にやるべきことを見極めてやっていくことが大事かなと思っています。CDOでいうと、女性管理職比率を30%まで引き上げることを目標にしていますが、その数字に囚われ過ぎず、シンプルに、自分はこの組織に対して働きやすい環境を作れているのかな?という視点を大切にする必要があると思います。また、経営層だけで話していても、現場の声が疎かになり本質的な改善に繋がらないということもあると思うので、その間の立場として現場とのパイプになって、両方の考えを傾聴し、俯瞰的に課題を捉えていくということが大事かなと思っています。 ――最後になりますが、多様性が尊重される社会を目指して、もっとも重要だと思うポイントは何ですか? 【岩上友香さん】これは、一人ひとりが想像力を持つことだと思います。私自身、子どもを生む前は、ママたちの苦労とか悩み、どんなことが難しいのかを想像できていなかったなと思うんです。当時はできているつもりだったんですけど、自分事になって全然想像できていなかったなと気づきました。想像とのギャップにすごく驚きましたし、情けないなとさえ思いました。同性でもこんなに想像できないのに、性別や年齢が異なる人、バックグラウンドやライフステージが異なる人が理解をするのは、思っている以上に難しいと思います。会社はそういったさまざまな人々が集まっている場所だからこそ、解像度高く、相手の心を捉える努力が大切だなと感じています。 会社としては、異なる立場の人に理解を促すための努力も必要だと思います。例えば伝え方はとても大事だと思っていて、主観で話すというよりは、世の中のさまざまな事例や、いろいろな声を用いて、説得力のある事実を伝えることが大切です。「自分がこうしたいからこうしているんだ」というよりは、「組織がこういういい状態になるためにはこれが必要です」というようなイメージです。自分の権利を主張しているだけみたいになってしまうと意見が通りにくいかなと思うので、耳を傾けてもらえるような伝え方も大事かなと思います。 取材・文=平井あゆみ