「キラキラ女子」だった電気工事会社3代目の改革 「安心して失敗できる」研修棟で若手を育成
戦力化を早めて業績アップ
石川さんが社長に就任した1年目は業績がよかったものの、その後は右肩下がりでした。しかし教育体制を整えた結果、現場に出るまでに約1年かかっていたのが3カ月になり、若手の即戦力化で施工件数も増えました。その結果、2023年度の業績が就任1年目よりも伸びたといいます。 石川さん自身、「キラキラ女子」から社長に就任したころは、周りに完璧を求めすぎていたと振り返ります。 「結局、会社の雰囲気が悪いのは自分のせいだったんです。自分自身が変われたのは、娘を出産した経験が大きかったと思います。子育てはコントロールできないことの連続で、柔軟になることを覚えました」 「経営者として人を育てるということは、成長を見守り、失敗しても待つこと。根気が必要ですが、組織強化で必要なのはやっぱり『人』です。私自身がチャレンジさせてもらえる環境で育ってきたので、若い子たちには『失敗しても大丈夫』と思える環境を提供していきたいです」
人材育成を柱に100周年へ
東陽電気工事では月1回、従業員の家族向けにニュースレターを発行しています。それは、家族のサポートも大切にしたいという思いからです。従業員全員が持ち回りで書いた内容を、石川さんがパワーポイントでまとめ、印刷しています。 「若い世代は家族との時間が少なかったり、熟練の職人も家で仕事の話をしない人もいます。私も子ども時代に父から仕事の話をもっと聞きたかったんですよね。だからこそ、ご家族向けの広報誌を作って、直接郵送しています」 石川さんは小学生の娘にも積極的に仕事の話をしているといいます。母の仕事に興味を持った努力家の娘は、従業員の協力を得ながら毎日勉強を重ね、第二種電気工事の試験に合格したそうです。 「(9年後の)100周年に向けて考えているのは、若い世代の育成です。業界全体の人材育成を事業の柱に据えたいと考えています。若手の育成をしながら、引退する職人の受け皿にもなりたいです」 人材育成を軸とした新しい経営モデルは、建設業の未来を切り開くかもしれません。技術と志をつなげるため、石川さんは次世代に向けて動き始めています。
フリーライター・奥村サヤ