なぜ、まだ「逮捕」されないのか…三菱UFJ銀行元行員が貸金庫から十数億円を盗んだ「大胆すぎる犯行手口」
普通に考えたら懲役8年~10年か
「窃盗罪ですね。他人からの信頼を受けてなにかしらを預かった人間が、自らの占有下にあるものを着服する。これが横領罪です。銀行員が個人的にお客さんから何かを預かっていて、それをネコババすると横領になる。ただ今回の場合、顧客は行員個人に預けていたわけではない。 貸金庫の占有を持っているのは銀行の支店長です。銀行の支店長が着服していたら横領です。元行員は支店長以下の人間のため、いわゆる刑法上の占有は持っていない。占有を持っていない人間、つまり銀行員個人が支店長の占有下にある顧客の資産を盗ったので、窃盗罪になるんです」 窃盗罪の法定刑は10年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科せられる。今回のように被害額が多い場合は罰金刑ではなく、実刑が予想される。 元行員は 4年半の間に何度も窃盗を行なっていることから、窃盗罪が複数成立する。その場合、併合罪が適用され、法定刑が加重され、刑の上限は15年となる。 「殺人と違って窃盗罪は財産犯です。被害金額が大きいということを加味しても、懲役何十年とはならないでしょうね。普通に考えたら懲役8年~10年ぐらいだと想像します」 一方、三菱UFJ銀行には法人としての責任が求められる。
元行員に支払い能力がなければ銀行が補償
「『銀行業』という業務執行の過程で、従業員が貸金庫の中のものを盗んだのが、今回の事件。銀行は使用者責任という、顧客に対して責任を負わなければなりません。元行員による被害額が十数億円だとすると、当事者である元行員だけでなく、法人も同額の賠償金を負う必要はある。 元行員が返せないとなれば、銀行がまずは顧客に補償することになります。その後、銀行が元行員に損害賠償を求める訴訟を起こしても、元行員に支払い能力がなければ銀行は泣き寝入りするしかないでしょう」 問題はそれだけではない。金融業界に詳しいジャーナリストが指摘する。 「銀行からは契約者の被害届は出せないんです。契約者本人に被害届をだしてもらう必要がある。ですが、そのためにはいくつものハードルがあります。 被害届を出す際に、盗まれたものを具体的に申告する必要があります。高齢の契約者の場合、貸金庫の中身を忘れてしまったり、訴訟リスクを懸念して届け出をためらう人もいるでしょう。被害届を出さないケースも少なくないと思いますよ」 十数億円という莫大な財産が盗まれたにもかかわらず、加害者である元行員に支払い能力がなければ、返済の見込みはない。被害届の提出が少なければ罪状も軽くなる。いくら法律で決まっているとはいえ、被害者にとっても、銀行にとってもやりきれない状況だ。 三菱UFJ銀行の広報担当者は、次のようにコメントをしている。