なぜ、まだ「逮捕」されないのか…三菱UFJ銀行元行員が貸金庫から十数億円を盗んだ「大胆すぎる犯行手口」
“手動式貸金庫”での犯行か
肝心のセキュリティはどうなっているのだろうか。三菱UFJ銀行の貸金庫規定には4種類の貸金庫が記載されているが、一般的な仕組みとしては全自動、半自動、手動という3タイプにわけられる。 「全自動の場合、人がひとり入れる広さの貸金庫室内で内容物の出し入れを行います。この部屋に入るには、貸金庫カードと暗証番号が必要です。これらによる本人確認が完了すると貸金庫室のドアが開き、入室することができます。 室内で再びカードの暗証番号を入力すると、機械から自分の契約した引き出しが自動で排出されます。利用客はここで初めて貸金庫の正鍵を使い、引き出しの蓋を開けることができるのです。引き出しは利用後に自動で格納される仕組みになっています。 半自動は、貸金庫室に入るために利用カードを入口で通し、暗証番号を入力するとプラスチック製鍵が発行される。そのカギで貸金庫室の自動ドアを開き、入室して自分の貸金庫を操作する。物品の出し入れが終わったら、本鍵で貸金庫を施錠し、プラスチック製鍵を返却すると退室できる仕組みです」 手動式は利用客が貸金庫カードと正鍵を窓口に持参し、行員立ち合いのもとで使用する。このとき、カードキーと暗証番号の合致を確認して、ようやく入室が許可されるというもの。 「手動式がいちばん行員が関与するため、不正操作ができるかもしれない」と前出の高橋さんは推測する。
厳重に管理されているはずが…
「貸金庫の正鍵は約3センチ足らずの小さなもの、もしくはカードタイプです。ひとつひとつを共通で開けられるマスターキーは存在しません」 未利用の貸金庫の場合、本鍵と副鍵(スペアキー)は封印された状態で、貸金庫の中の銀行専用貸金庫で管理されている。契約の際にスペアキーは封筒に入れ、契約者自身で封筒に割印。さらに透明なビニール製の封筒でカバーし、ホログラム入りのシールを貼り付け、担当課の課長が割印をする。銀行の人間はもちろん、第三者でも開けられないように工夫を施されている。 封筒に入れられた契約者のスペアキーは施錠付キャビネットに納められ、まとめて管理されている。 「このキャビネットの開閉は、貸金庫を管理する課の課長と支店長、副支店長しかできない。ただ、事件を起こした元行員は契約者のスペアキーが入った封筒を開けたのではないかと推測しています。 契約者のスペアキーが格納されているキャビネットを開けるための鍵は、重要鍵管理機で厳重に管理されています。『いつ、誰が何時何分から何時何分まで使用したのか』など利用履歴は、すべて記録されているはずです」 だが、重要鍵管理機には、使用者の変更ができるマスターキーも存在する。これは支店長、もしくは副支店長が管理しているというが、元行員は何かしらの方法でこのマスターキーを手に入れ、重要鍵管理機の設定を変更して犯行を重ねた可能性がある。