「頑張っても髪が生えない」生まれつきの症状に悩む女性 治療費の総額は大学の授業料4年分「さすがに親に申し訳ない」クリニック通いを辞めた日
あるとき、彼と一緒に雑誌を見ていたら、彼が「この髪型、かわいい」と言って、お団子の髪型をしている女の子を指したんです。そのときは普通にしていましたが、やっぱり悲しかったですね。それから少しして、彼が「何か悩んでるんでしょ?」と聞いてくれたので、そのときのことを「実は嫌だった」と話したんです。同時に、髪の毛の治療もしているといった話を、初めて彼にしました。彼は「そうだったんだ。気づかなかった」って。単純にかわいいと思ったから言っただけで、その髪型をしてほしいから言ったわけじゃないんだよと言ってくれて、お互い腹を割って話せたのかな。私の気持ちも理解してくれたように思います。
── 初めてウィッグをつけたのは20歳のころだったそうですね。 memeさん:成人式を迎えるときに、友達と着物の話とセットで髪型の話もしていたんです。私は何も髪型で楽しめないだろうと思っていたところ、ロングヘアの友達がアップスタイルではなく、ボブスタイルを考えていると言ったんです。そのとき、ウィッグという手段があるんだと思って、ボブもいいなと。そこでウィッグを買ってみたのが始まりです。彼にもウィッグを被った写真をドキドキしながら見せたら「すごくいいじゃん!」と言ってくれて。それからは普段は素のままでしたが、遊びに行くとき、デートするとき、オシャレするとき、帽子を被るような感覚で使うようになりました。一気に世界が広がっていきました。
PROFILE meme さん めめ。先天性縮毛症/乏毛症ネットワーク冠花(かんな)の会の代表。中学3年生のときに「びまん性脱毛症」として治療を受ける。その後ブログで自身の症状について発信する中で「先天性乏毛症」を知り、自身もそうではないかと考えるようになった。 NPO法人Alopecia Style Project Japan(ASPJ)の理事も務めている。 取材・文/松永怜 写真提供/meme 撮影/Yuka Uemura
松永怜