【F1】角田裕毅のこれまで見せたことのない姿 どのドライバーよりもタフなレースを戦った
【最後の20周はまさに予選ラップの連続】 「ミディアムで33周を走るのはかなり厳しかったです。でもあのポジションだと、僕としてはセーフティカーを待つしかなかったので、あれしかやりようがなかった。残念ながらセーフティカーが入らなかったので、ソフトに履き替えて挽回していくことにしました」 ライバルたちが続々とピットインしていくなか、角田はタイヤをいたわって33周目まで保たせたものの、セーフティカーは出ず。2008年から開催されてきたシンガポールGPは、15回目にして初めてセーフティカーの出ないレースとなった。 ミディアムからハードタイヤへつなぐのがセオリーだが、角田はリスクを取ってソフトを選択。ここまで第1スティントを引き伸ばすことができれば、残りはソフトで走りきれるというのがRBの読みだった。 角田担当のレースエンジニア、エルネスト・デジデリオはこう説明する。 「残念ながらセーフティカーは出なかったけど、ミディアムを33周目まで引っ張ることができたから、第2スティントはソフトを履くことができたんだ。そこからはコース上でポジションを挽回していくしかないから、タイヤのアドバンテージを生み出すためにソフトを選択するのは当然の判断だった。実際にペースはとてもよかったと思う」 そこからは猛プッシュでコラピントとのギャップを一気に詰め、背中が見えるところまで来た。しかしレースは終わりを迎え、角田は12位のままチェッカーを受けることになった。 「タフなレースだったと思う。でも、ラスト20周はすばらしいチャージだった。僕も楽しませてもらったよ、君もそうだと思う」 チェッカーを受けた角田を、デジデリオが無線でねぎらった。 「最後の20周はまさに予選ラップの連続ですべて出しきったし、裕毅は本当にすばらしいドライビングをしてくれたと思う。僕もレースを楽しんだよ。ペースはとてもよかったし、クルマもいいベースラインがあったと思う。それだけに、スタートで出遅れてポイントが獲れなかったのは本当に残念だよ」 デジデリオがそう振り返るように、スタートがすべてだった。